例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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気掛かり


 母の移転先の病院へ自転車で出掛けた。丗分あれば着く筈だったが、案の定道に迷ったうえ、いつの間にかアイフォンの明るさの設定が変わっていて地図が見られないことになった。方角と大通りに出ればいいことはわかっていたので、なんとか辿り着くことはできたが。
 入院についての説明を受け、衣類やタオル類など入院セットに選択はなく同意し申し込めばいいだけで、面会も週壱に決められているとわかった。こちらから向かうバスは日に数本しかないが、丁度面会時間の頃に壱本あった。そして帰りのバスが壱時間に壱本あることに驚く。
 こちらでお世話になるつもりで説明を聞きにきたのだと伝えると、夕刻になり受け入れ日が決まった連絡が入る。

 家では、先々電動ベッドや車椅子などをレンタルすることと訪問介護も頭に入れ、壱階の半分を母が使う部屋に充て過ごしていた。
 いずれ車椅子で生活するためにと、壱度目の改装時で母が選んだ車椅子用の床板に座り、母の汚した寝間着やタオルを洗濯するのもあと壱、弐回のことだろうと想った。それとも想像を超え、壱度戻ってくるだろうか、などと。
 母のこれからに自分にも幸い金銭的にも負担はなく、頻繁に会えないことだけが少しの気掛かり。

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西日の時間


 人づきあいに於いて特に疲れを感じる人は相手に良く見られたい傾向がある、と書物には大抵記されている。
 少なくとも自分の場合他人に対しての警戒心と緊張感が強い為であって、酷い時は躯がふるえる。まるで人慣れしていない動物のようだと想う。
 それから時には相手の気持ちに疲れてしまう。愚痴に悪口、頼み事は受けられないとわかってから聞く耳を持たなくなった。

 台所に西日が入る時間だった。強い眠気があり手折れるように座椅子にもたれかかったところまでは憶えている。
 目覚めると伍時を過ぎていた。西日はまだ残っていて、茶色のレエスのカーテンを麦色に変えていた。冷蔵庫から出したクリイムチーズのプリンは味が濃厚で、夕食は此れとアボカドとブロッコリー、玉葱の酢漬けのサラダで済ませる。

 彼と暮らしていたことは奇蹟のようなことだったのかもしれない。
 彼に話し掛けては平静を取り戻す。そうしては名前を呼んでほしくて時々聞こえないふりをする。

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整理


 今日も廻ってきた回覧板に、行政区総会についての委任状をお願いするメモ書きが入っていた。数枚重なった委任状に参加するのは班長さんともう壱件のお宅しかないことが自ずとわかった。
 至急と判が押されてあったので一応目を通し委任状を書き、(うちが最後なので)班長さんの家の郵便受けに落としてきたけれど、適当でいいのねと想ったら笑ってしまった。絶対こうしなさいと細かく指図する者がいると疲れるし、嫌な気持ちにしかならないのでよかった。

 今日は叔母も母の見舞いに来ると聞いていたが、叔母は来なかった。そんな気がしていた。壱昨年母の家に来ると言い来ずに連絡もなかった。其の前にちょっとしたことがあり、あたしの中で決定打になった。
 感情で白黒つける者に事実は見えてこない。相手が離れたように、自分もそっと離れていけばいい。(ただ失礼なことはしないよう気をつけたい。)

 花束代わりにした唐辛子は今日もいい色をしている。彼に買ってもらった(此れも溜め込んだポイントを使ったらしい)食器棚の中をまたちょっと整理した。

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回覧板


 町の端から端まで自転車で何拾分間掛かるのだろう。回覧板に入っていた行政区総会なるチラシに記載された班の数に驚く。
 総会は全員(世帯ごと壱名)参加なようで、母のこともあり班長さんに委任状を出した。

 生まれた村のことを幾つか憶えている。通りの清掃はなく、清掃と言えば神社の清掃だったと想う。高台にあった神社と大きな樹木のことをなんとなく記憶している。
 殆どの家が農家だったが、うちはそうでなく、つきあいも他の家とは少し違っていたのではないだろうか。ひとつ齢上のかよこちゃんと云う女の子があたしに意地悪だったのも、うちが(あたし自身も)皆と同じではなかったからなのかもしれない。

 他人と同じにすることを特に考えたことはない。けれど協調性がないと言われたことも特にない。
 父も特に他人と同じにしようと考えない人だった。変わり者と言われることもあった父だったが、道理と義理を持っていて人づきあいも問題なく、案外人たらしな壱面もあったかと想う。
 其のとき其のとき、其の場其の場、で過ごしていこう。今のところ思い入れなどない町、好きも嫌いもない町で。

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贅沢な使い方


 サポートが終了する旨の通知がノートパソコンに届いている。彼がパソコンを買い替えようと想っていたのだけれど、と話していたのは此の事だったのかと想うがどうしていいかわからずにいた。

 つきあっているとき入ったハンバーガーショップで、これからバイトに行くのだとメモ用紙に並ぶアルファベットと数字を暗記していた彼を思い出す。其れが何なのかあたしには全くわからなかった。
 数年後試験を受けに行くと言い彼が出掛けた後、問題集を開き絶句したこともある。
 パソコンは諦めて、タブレットを購入しようかと考えたが、タブレットにキイボードは繋げられないものらしく、彼が持っていた弐枚の情報処理技術者試験合格証書を眺めながらどうすればいいのか考えていた。

 取り敢えずバージョンアップをし、できなかったら問題部分を彼の友人に問い合わせることにしようと試みると、何の問題もなくバージョンアップできてしまい呆気にとられることとなった。
 ここまでに掛けた時間は数拾箇月に及ぶ。時間を使い過ぎる自分。けれど急かす者もなく、これからも贅沢に時間を使っていこうと想っている。

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