西日の時間
2025, May 13
人づきあいに於いて特に疲れを感じる人は相手に良く見られたい傾向がある、と書物には大抵記されている。
少なくとも自分の場合他人に対しての警戒心と緊張感が強い為であって、酷い時は躯がふるえる。まるで人慣れしていない動物のようだと想う。
それから時には相手の気持ちに疲れてしまう。愚痴に悪口、頼み事は受けられないとわかってから聞く耳を持たなくなった。
台所に西日が入る時間だった。強い眠気があり手折れるように座椅子にもたれかかったところまでは憶えている。
目覚めると伍時を過ぎていた。西日はまだ残っていて、茶色のレエスのカーテンを麦色に変えていた。冷蔵庫から出したクリイムチーズのプリンは味が濃厚で、夕食は此れとアボカドとブロッコリー、玉葱の酢漬けのサラダで済ませる。
彼と暮らしていたことは奇蹟のようなことだったのかもしれない。
彼に話し掛けては平静を取り戻す。そうしては名前を呼んでほしくて時々聞こえないふりをする。