例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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やり直す


 外に置いた棚を直す作業を始める。
 誰が天板を付けたのか、釘の色がばらばらだ。そのうえ深い傷があちこちにあり、板を剥そうと釘を抜こうとするが釘はなかなか抜けない。板の厚さに対し余りにも長い釘が打ってあり、其れが打たなくていい箇所にまで打ってある。なんて好い加減な作業なのだろうと想う。
 廃棄しても困らないのだけれど、やり直したい気持ちの方が大きい。

 釘を抜くのは容易でなく、午后は和室に置いていた仏壇を母の部屋に移すことにした。
 母の部屋に続く障子を開ければ仏壇、と云う位置に置いていたが、移してみると線香をあげるでもご飯を供えるでも傍に花を活けるでも具合がいい。
 仏壇の隠し扉には小さな巾着が入っていた。中には痒み止めの塗り薬が数本。母が頼んでも医者に出して貰えず、伯父が分けてくれていたのだと聞いている。叔父夫婦に盗まれぬよう入れたのだろう。だが、仏壇に入れた生活費も抜き取られたのだ。入れ歯さえ持って行ってしまうような人たちだった。

 玄関を上がり、すぐに仏壇が眼に入る家はないのだろうが、あたしは気に入り、父に我が儘をした。「守ってね。あたしと一緒に此の家を守ってください。」
 何日掛けてでも棚を直そう。お金が掛かっても屋根も修復してもらおう。例え明日死ぬ運命だったとしても。

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