例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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愛しいもの


 鉛筆で絵を描く。適当な板に釘を打ち小さなオープンラックをこしらえる。玉葱を刻み酢に漬ける。
 どれも今日始めたばかりでもできる簡単なこと。言えるのは、しないよりした方が倖せな気持ちになれると云うこと。

 壱度はうどん粉病になり元気がなくなった姫林檎に欠かさず水やりをしていたら、今朝気付かないほどのそれはそれは小さな莟をみつけた。
 今夏は、ジャコバサボテンや百合科らしい植物や・・・、鉢植えが皆きれいな緑に染まっている。

 今日は昨日も穿いた胸当て付きのスカートにした。ガーゼの薄くやわらかな生地と草木模様が気に入っている。
 何年も前に印度雑貨店で買った此れともう壱枚を、死ぬまで着ようなどといつのまにか想うようになっていた。夢のようなことを考えていると想っていたのに、此の頃では実現しそうだと想うようになっている。

 物はいつか壊れてしまうかもしれない。永遠に同じであり続けるものなどないだろうに、愛しいもの、と繰り返し頭の内で言葉にするだけできらきらと光り始める半径伍佰メートル(?)の世界。
 貝殻草を束ね彼の傍に吊るすとふうんなんて顔をしていただけだったのに、玉葱を酢漬けにしたと教えると、其処には嬉しそうな眼があった。

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茂る


 気温が丗度を超えてくると臭いが気になり始める。フィルターごと乾かした珈琲の出涸らしをマスキングテープで口を閉じ、流しに塵箱に玄関にとあちこち置いて消臭する。
 幸運なことに改装後此の家でゴキブリを眼にしていない。越してくる前はゴキブリにスズメバチに・・・、壱番困ったのが浴室に現れるムカデだった。排水管に巣喰っていたのだろうが、そうと判るまで泣きながら格闘していた。なんせそれまでムカデを見たことはなかったのだから。

 久し振りに飲んだ低温殺菌牛乳はやはり好みの味で気持ちが弾む。
 臭いに虫にアレルギーに体温に頭痛に痒みに発疹に・・・、と何かと気になる夏がやってくる。そのくせ好きな季節を問われたら、真冬と真夏と答えてしまうのだ。
 今朝はオシロイバナ(たぶん)が花をひとつ咲かせていた。それとドクダミ。抜いても抜いてもドクダミは生えてくる。嗚呼、或の独特のにほい。

 夏を想うと頭に蔦が絡まりどんどん葉が茂り、あたしの胸から上は樹海になってしまう。濃厚な草の匂い。手にした珈琲の出涸らしで追いつく筈もなく、あとは川や海に逃げるしかない。
 そう云うわけで夏は裸足に限る。既に部屋も玄関も無くなりつつある。

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新しいかどうかでなく


 何年前に入れたのだかわからない畳は陽に焼けて色が茶になっているものの、然程傷んでいない。
 ちょっと擦ったくらいで表面に傷ができる畳に驚いたのはいつだったろう。以前住んでいた借家の畳もそうだった。取り替えたばかりだと判るうす緑をした畳の表面が脆いとわかり、ラグを敷き使っていた。

 引っ越しの際、それまで使っていたラグを数枚持ってきた。新しくなくても竹や麻が使われているものは感触がよく、棄てたくなかった。其れを自室に敷き、元々此の家にあった夏用のイグサのラグを母の部屋と和室に壱枚づつ敷いてみた。
 和室には敷かなくてもよかったのだけれど、敷いてみると青い色と朝顔の模様がアクセントになり、涼しげな雰囲気をかもし出している。昼寝するのによさそうな部屋になった。

 畳のへりでできた母の手提げも掃除し、桐箪笥と籐でできたチェストを並べた辺りに置いてみると素敵なことになったので、どれも棄てないからあと入院中の母に今日も呼び掛けて笑う。
 そうして、新しいかどうかでなく使えるかどうかなの、とひとりごちた。

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好きにするだけ


 扇風機とストリート・スライダーズの歌で暑さを凌ぐ。エアコンのつけっ放しは腰を痛める確率が高い。それに暑さより気になるのは、肌のざらつきと痒みに軽い頭痛。
 何処の空き地で始まったのか、選挙演説が聞こえてくる。異論はないが、今は頭痛を消したかった。壱旦CDを止め、選曲したのはマスターベーションと題された歌。「マスターベーション、あんたのお頭は・・・」。丁度そんな頭の状態。

 田舎で自転車に乗っていると職務質問されると云う話をよく聞く。職務質問されたことこそないが、確かに自転車に乗っている人は学生でもなければ滅多に遇うことはない。車に乗らないのは、それ相応の理由がある者とみなされておかしくないと云うことだろう。
 自転車もだが、もしかしてスライダーズの歌も鰐のイヤリングも蠍の指輪も水牛の頭のネックレスも帝王切開とプリントされたTシャツも・・・、まずかったのだろうか。

 ひとりぼっちになっても(団体に属せなかったと云う意味で)好きにするだけだけれど、土地土地の常識は難しく戸惑っている。
 ただ、ときどき見知らぬ子が挨拶してくれるのを嬉しく感じている。元気でいてと胸の内でエールを送らずにはいられない。

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無抵抗


 陽が照っている。暑い。しゃがんで腕を伸ばし草をむしる。弐週間も経つとおそろしく草は背が高くなっている。
 額から滴り落ちる汗。冷まして冷蔵庫に入れた水も、もはや冷たさを感じない。氷を入れ飲み干すと、躯は床と平行になった。
 今年はまだ体温がそれほど上がってなく、晴天の日も動き廻って大丈夫だと想っていた。

 夕食に蒸したオクラとトマト。デザートにバニラのアイスクリイム。ご飯が食べられない。
 扇風機の警戒の文字が赤く染まっていたので、入浴前に窓を閉めエアコンをつける。大抵はおまかせの快適自動。除湿運転してくれているのか冷房運転してくれているのかわからないけれど、冷えたほどでもない部屋が眠気を誘う。
 躯が・・・、落ちていく、と想ったとき今年も夏バテが始まったと知った。

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