例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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夏の真昼の夢


 檸檬水をこしらえ、加えるのは砂糖でなく塩。そうめんを茹で、のせるのはたたいた梅干し。お菓子入れにしたまるい缶の中身は空。
 彼に買ってもらった「トトロ」のふわふわの膝掛けには見向きもせず、知人に戴いた「トトロ」の綿毛布を脇に寝転がる。猫と一緒だなあ。夏は手足を投げ出して横になってばかりいる。
 口を開くのもだるくなり、ナ行はますます怪しく。躯は朝から痒く、目つきは更に悪くなり。このままどら猫になり、溶けてみたいと想う。
 お気に入りのリトルミイのコップには納まりそうになく、浴槽まで行き溶けたなら亀たちを浮かべてみたい。

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ゆだる


 夏にゆだる。自分の國の言葉も忘れてしまいそうになる。
 隣りの家の前ではあたしの背丈を越えそうな鬼薊が春から居座っている。大きな大きな綿毛を幾つも飛ばし、とうとうあたしの居場所を脅かすようにまでなった。
 生きるためだと鬼薊は嘘を吐く。
 繰り返される過ち。
 生きて、と云う誰かの声に、死なないで、と呼応する自分。ただ、それだけ・・・。

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幾度となく観た映画


ジョニーは戦場に行った
ひまわり
火垂るの墓
シンドラーのリスト
シン・レッド・ライン
さよなら子供たち、
デイファンス
野火
アメリカン・スナイパー
ダンケルク
サウルの息子
赤い闇スターリンの大地で
1917 命をかけた伝令
イングロリアス・バスターズ
戦場のピアニスト
・・・・・・・・・・

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干し草の匂い


 バスの座席に落ち着き、病室の椅子で汗をぬぐい、お腹がおかしくなり病院の便座に何分も居座っている間に、土手の片側の草はきれいに刈られていた。
 夕刻になり出てきた風に干し草の匂いが絡み、あたしを包む。ふうっと息を吐いたとき遠くに動くものがふたつ見えた。
 黒い毛がタヌキを想わせる。向こうも気付いたようで、立ち止まりこちらをじっと見ている。其の姿はタヌキ、子ダヌキに見える。急いで自転車を走らせるが、草むらに消えてしまった。
 あとに残ったのは干し草の匂い。お腹はもうなんでもなく、いい壱日だったと声を風に放つ。

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航海


 舟の行方はいつもわからない。
 想像もしない未来。定まらない感情。岸に着くとおちつくひまもなく、次の舟に乗り換える。

 乗り換えは何度しただろう。手にできたわずかなものを強くにぎる。余程のものでない限り、失ったものを考えることはない。
 舟に乗らない選択はなく、嫌なら海に身を投げるしかないと云うことだけはわかっている。

 願うのは最後にどんな舟に乗ろうと、どんな場所に辿り着こうと、笑っていたいと云うこと。きっとあなたがそうだったように。

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