余韻
2024, May 12
寫眞が余りにも少ない年がところどころあり、喧嘩して関係が悪化した年だったろうかと想ったが、そうでなく親が病に伏せた年だったことを思い出す。
あたしたちの寫眞が多い方なのか、少ない方なのか、わからない。ただ、壱枚の寫眞が多くを語ることもあることを知っている。
友人宅やカラオケルームで寫した彼は笑ったりお道化たりしているのに、ふたりで遊んでいるときに彼を寫した寫眞に、彼の崩れた表情は年を追う毎にみつからなくなった。
彼が寫した寫眞に彼の他の誰にも見せない自分の顔を教えられるように、また彼もそうだったことを教えられる。
今朝は試供品で貰ったローズティーを淹れる。
ひと口含むと酸味があり、あなたの好きなキリマンジャロの珈琲と同じで酸味を感じるお茶だよ、と彼に差し出す。ふた口めを含もうとするとあまい味を舌に感じた。
時々昔の知り合いや契約上の付き合いの人や彼の会社や医師や叔父夫婦や彼の妹弟を思い出しては、心が折れそうになる。
どんな日々もあまい余韻になるように、と寫眞を脇に泣きながら笑う。