例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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幾度となく観た映画


ジョニーは戦場に行った
ひまわり
火垂るの墓
シンドラーのリスト
シン・レッド・ライン
さよなら子供たち、
デイファンス
野火
アメリカン・スナイパー
ダンケルク
サウルの息子
赤い闇スターリンの大地で
1917 命をかけた伝令
イングロリアス・バスターズ
戦場のピアニスト
・・・・・・・・・・

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干し草の匂い


 バスの座席に落ち着き、病室の椅子で汗をぬぐい、お腹がおかしくなり病院の便座に何分も居座っている間に、土手の片側の草はきれいに刈られていた。
 夕刻になり出てきた風に干し草の匂いが絡み、あたしを包む。ふうっと息を吐いたとき遠くに動くものがふたつ見えた。
 黒い毛がタヌキを想わせる。向こうも気付いたようで、立ち止まりこちらをじっと見ている。其の姿はタヌキ、子ダヌキに見える。急いで自転車を走らせるが、草むらに消えてしまった。
 あとに残ったのは干し草の匂い。お腹はもうなんでもなく、いい壱日だったと声を風に放つ。

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航海


 舟の行方はいつもわからない。
 想像もしない未来。定まらない感情。岸に着くとおちつくひまもなく、次の舟に乗り換える。

 乗り換えは何度しただろう。手にできたわずかなものを強くにぎる。余程のものでない限り、失ったものを考えることはない。
 舟に乗らない選択はなく、嫌なら海に身を投げるしかないと云うことだけはわかっている。

 願うのは最後にどんな舟に乗ろうと、どんな場所に辿り着こうと、笑っていたいと云うこと。きっとあなたがそうだったように。

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紅茶の時間


 紅茶店で求めた紅茶葉も残り少なくなってきた。家にお知らせが届くことも今はなく、黒すぐりとブルーベリィの入ったお気に入りの紅茶の味も忘れていくのだろうか。
 日々、出逢いと別れの繰り返し。そう想っても出逢いも別れもおぼろげで、いつまでも醒めない夢のように残っている出逢いと別れがある。

 ノンカフェインだからと日暮れにマグカップにたっぷり紅茶を注ぐ。うす暗くなった部屋で椅子に座り直し立膝をつく。耳に入るのは扇風機の廻る音だけ。
 目を閉じてじっとしていると、嫌だったこととか汚いと感じたこととかはみんな棄ててしまったのだと想う。
 ただ静かに時間が流れていく。彼と過ごした時間と彼と過ごしている時間とが交錯し。

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音と静物


 好きな音は邪魔にならない。
 静物を眺めるように音を眺めていると、静物と同じように、或いは存在する大概のものと同じように、悲しみを内包していると感じる。けれど彼らが悲しみを口にすることはなく、眺めている自分が悲しくなることはない。生活に、日常に、入り込み、机の上や籠に納まり、時々あたしの内側を撫でたりもする。

 好きな音楽は、特に冬か夏に聴きたいと想ってしまう。
 夏になると必ず開く文庫本が数冊あるが、夏になると必ず聴きたくなるレコードやCDがある。何故かは未だにわからない。音楽を聴いていると雨や乾いた空気を感じることが多く、そのことがそうさせるのだろうか。

 それから好きな歌は知らぬ間に口遊んでいたりする。
 好きな小説の台詞をなぞるように、鏡の中に好きな映画の場面をみつけるように、ひとりでに。

 気が付いたら右目(白目)が充血していた。じっとしていても暑さが疲労させる。エアコンをつけた部屋で壱枚だけ手に入れることのできた(CDでだけれど)阿部薫を聴いて過ごす。
 冷たくなっていく腕。恐いくらいに静物に近付いていく(と感じている)自分にぽろぽろと泣いていた(気持ちよくて)。

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