例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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欲望


 欲望のままに生きるのが(人間も含め)動物で、自然なこと。今日も誰がかそう話していた。
 一緒に生きているものを助ける動物たちの姿を、ブラウン管を通してではあるけれど幾度も見てきた。
 (欲望などでなく)生きるために生きるのが動物たち。欲望のままに生きるのは(不自然な)人間たち。生きるために競争もするけれど、其処をかいくぐることをするのも人間(ごく自然に)。

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花まる


 ブラウスは弐日で完成した。首周りに手こずり、てっきり壱箇月ほどかかると想っていた。
 首周りに余裕があったのでゴムを通してみる。半袖なので必要ないかとも想ったが、袖口にも通すととても着やすくなった。
 長方形の布を合わせ脇と肩を縫い、袖を付け、適当に首周りにカーブを付け仕上げただけの簡単なものは、なれている人なら半日あればできてしまうだろう。が、型紙もなく、運針もできない自分が初めてこしらえるには決して簡単なものではなかった。

 縫い目を見ると酷いものだが、したいと想っていたことがやっとでき、自身に花まるをつけ彼の前で踊った。

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手仕事


 アネモネにアカシアだろうか。黒い絲で花が刺繍された布は数年前求めたものだった。此の数年余りにもいろいろあり過ぎてそのままにしてしまっていた。
 母が家にいればと想いつつ、見よう見まねでかぶるタイプのブラウスを縫うことにする。玩具の電動ミシンを持ってはいるが、まずは手縫い。

 ミシンは或る日突然彼から渡されたものだが、見る都度笑ってしまう。あたしが欲しいのは昔家にあった部屋に置いておくだけでも素敵な足踏みミシンだった。
 世の中で便利だと言われるものを殆ど使いこなせた試しがない。お蔭で便利と云う言葉に心は動かず、見た目で物を選ぶようになってしまったが、其れはあながち間違いでもなく自身の好みは自身の使いやすさに通じているのだと想う。

 薄くやわらかな布は、いい夏の部屋着になるだろう。
 運針ができないので何日かかるかわからない。半袖の季節が終わってしまわなければいいのだけれど。

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ぬくさ


 壱日数回水替えをしても茎が溶けていくのは追い付かず、背丈のなくなったマリーゴールドを花瓶からジャムの空き瓶に移す。明日は飾れなくなるだろう。鬼百合はひと花残っているが、やはり明日には飾れなくなるだろう。
 鬼百合は弐週間以上もったがもう売られてなく、マリーゴールドは壱週間もたなかった。もう切り花は無理だろうか。鬼灯が出てくるまで庭のバーベナでも飾ればいいだろうか。

 おはよう。そう言って重い花瓶を抱える都度胸のあたりがぬくくなる。
 おはよう。それだけでもぬくくはなるけれど。信楽焼の湯呑みに注いだ緑茶に琉球グラスに注いだ水に淹れたての珈琲を運ぶときもぬくくなるけれど。重い花瓶を抱えたときのぬくさを覚えてしまった。
 ちょっと淋しいなと想っていたら、夕刻ゼラニウムの赤い花をひとつみつけた。急に咲かなくなったのは、急な暑さによるものだったのだろうか。よく見ると幾つかつぼみもあった。

 いつもいつも同じようにはいかない。またうんと悲しくなったりしても胸のあたりのぬくさは忘れずにいたい。

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苦味のなくなった苦瓜


 小さめの苦瓜がふたつ。ひとつを冷蔵庫に残し、中をくりぬき、まな板にのせる。ざるいっぱいになった苦瓜の薄切りを弐、参度ぎゅっと握ると、少し嵩が減った。ひとり分の木綿豆腐に、卵はひとつでいいと想っていたのに、彩りが悪くひとつ追加した。
 いつも中華味でこしらえるところを、めんつゆなら簡単だと知り、めんつゆをまわしてみたが、苦瓜の苦さばかりが舌に残るのが気になった。考えた末、豆腐と卵でまろやかな味になるならマヨネーズでもいいだろうと試しに端にかけて試食すると悪くなかったので、適当に足してざっくり混ぜた。
 炒めてさらに嵩が減った苦瓜を、炊きあがった黒米入りのご飯と一緒に食べる。嗚呼、そうか、紹興酒も入れていたのに忘れてしまった。彼にも出したけれど、首を傾げているような気がする。
 すっかり苦味のなくなってしまった苦瓜に苦笑いする。もうひとつ残っている、と言いわけをし。

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