炭酸水
2024, May 07
御飯を炊くのを忘れてしまいフェットチーネを茹でる。ソースは檸檬とうに。茹でたオクラと千切った紫蘇を飾り、デザートの苺を添える。飲み物は炭酸水。
最後のうにパスタ、と言い彼の前に出したあとで、ソースは店で手軽に手に入れられることに気付き言い直す。
特別な日や思い立った日にまたふたり分作ろう。自分が口にしないうにでも薄荷味の食べ物でもパイナップルでもワインでも、卓に置いたら愉しいだろう。
炭酸水がたてる小さな音を彼になぞる。淡く果敢ない音。けれど、夏や海の光景を連れてくる。
まぶしさの中に永遠を見たような気がした日、黙って地平線の向こうを見ていたようにひととき炭酸水をみつめて過ごす。ひたすらやさしい時間。自分が透明になっていく感覚。
いつか拾った櫻貝をまだ持っていると話したなら、彼は笑うだろうか。