落とし物を届け
2025, Jul 15
警察署の落とし物係りを訊ねた。
持って行ったのはナップザックだった。
金曜日の深夜弐時過ぎ、表が騒がしく目が覚めた。「さすがにヤバいんじゃねぇ?」「上れんじゃねぇ?」と中高生ほどの男の子の声が耳に入り、悪戯でもする気だろうかと窓を開けると、もう其処には誰もいなかった。
そして土曜日の朝、弐階に上がり窓を開けると壱階の屋根の上にナップザックが乗っていた。
取りにきたとして声が掛かることはないだろうと想い、電柱に括りつけておいたがひと晩経っても取りにくることはなく、日曜日の夕刻警察署に連絡した。
ナップザックに入っていたのは使用後と想われる靴下にシャツにタオルだった。タオルには辛うじて名字が記されていた。
物が物だけに面倒な手続きもなく、あたしの方は簡単に済んだが、警察の方ではどう処理するのだろう。学校に連絡が入り持ち主がわかったところを想像すると、気の毒にさえなったが仕様がない。
不法侵入で屋根から突き落とされるより痛くはないと想う。