葡萄の味
2024, Jul 30
電車とバスでお骨を運ぶ。母の家まで辿り着いたときには、ふらふらになっていた。
壺に納められたものが彼の骨だと云うことは頭でわかるのだけれど、或の日台の上に並んでいるのを眼にしたときほどの想いは生じず、遺影にした寫眞とペンダントに入れた骨とペンダント用の残った骨の方に想いが行っている。
これで別れてしまう、と云う実感も考えもなく、納骨は自分にとり文字通り骨を納めることの理解に過ぎない。それでも納得がいく場所、納得がいく寺、納得がいく住職の元へ、と想った日から、胸の内は静かになった。
デイサービスで葡萄狩りに行ったとき買ってきた葡萄だと、立派な葡萄を出された。見たこともないような大きな粒の葡萄は、これまで味わったことのない濃厚な味でおいしかった。
形はあとからついてくればいい。誰かのことを想う。形式ばったことを特に気にしない人だった。あたしのすることを黙って見ていてくれるように想う。