箱の中身
2024, Jul 27
藍色の箱の中に入っているのは食器を包むやわらかな紙だとばかり想っていた。此処に引っ越してから壱度も開けてなかったらしい。何故此れを残したのだろうと想うものが入っていた。其のときは、物に罪はないと想ったのだろう。けれど、其の物に関わる過去は忘れ去られ無くなりかけていた。
さようなら。そう言って手を合わせお別れした。もう逢うことのない人。嫌な思い出になってしまった過去の時間。訣別してよかった。何故禍を運んでくるものが存在するのだろう。そんなふうに誰も生まれてくるわけではないだろうに、人が人を苦しめる。歯止めが利かなくなった我は恐ろしい。
箱も棄ててしまおうかと想ったけれど、そうでなく倖せと入れ替えることにした。スープ皿肆枚とかたくりが描かれた皿を参枚丁寧に包んで入れた。此の皿をどうやって手に入れたかは誰にも話さないでおこう。あたしと彼とが知ること。
今度箱を開けるとき、此の皿にどんなものが乗るだろう。そう考えるとにこにこしてしまう。