強い匂い
2025, May 04
水を取りかえるため花瓶から抜いたとき流しにはらはらと落ちた花びらに、赤い花がゼラニュームだったことにやっと気付いた。
花屋で見る姿とは全く異なり、うねりながらひょろひょろと高く伸びた茎に、剥き出しの野生などと云う言葉を当ててみるとしっくりした。大きな葉は匂いが強く、室内より屋外が似合う植物だと想い調べると、アフリカからやってきたのだと知る。
久し振りで耳元に鳴るユッスー・ンドゥールの歌とトーキングドラムの音。壱瞬嗅いだような夏の夕暮れの匂い。ゼラニュームからする匂いと重なる。
夜になりブルーレイレコーダーの前に座り、もう壱度観ようと決めていた「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」を再生する。ホロドモール、ウクライナの大飢饉と其れを取材したジャーナリストの物語。
悧口になった方がいい、と口にする人にたまに逢うが、隠蔽は悧口なことなのだろうか。
残る匂い。濃厚な匂い。消されても其の都度誰かにみつけられ湧き上がる強い匂い。