古い道具
2025, May 15
塵に出す段ボールを置いていたガーデンラックをばらすことにした。網目状の板を繋いだ金具を六角レンチを使い外すが、忌々しくも所々針金で捲いて止めてある。叔父の持ち込んだものは使い勝手が悪く厄介なものばかりで不快になる。
道具入れにした鋳物のバケツを漁り、みつけたのが古いペンチだった。確か此れで父は針金を切っていたと想ったが・・・、と使ってみると何重もに捲いてあった針金はいとも簡単に切れた。
見ると薄っすらと青いペンキが乗っている。此れも叔父が・・・と想うと、居ても立ってもいられず、砥ぎ石で落とすことにした。赤錆だらけになってはいるが、使いやすく切れもいい。先の形が随分今のものと違うが、どれくらい前のものなのだろうと調べると製造された年月はわからなかったが、ペンチでなく釘抜きや爪切りにも似て名前さえわからなくなってしまった。
邪魔なものをばらし隅に片付け、廣くなった水槽置き場の中で亀たちが無防備よろしく石の上に乗り手足をだらんとさせている様子を見て、倖せな気持ちにさせられる。
飼われている亀に自分で用意できるものはないが、彼らにもお気に入りはちゃんとある。
直径壱ミリの青いペンキの跡さえ不快になるあたしの気持ちを叔父がわからないのはかまわないが、勝手に他家のあちこちに手を加えるなどあり得ない。
各々の家の各々の物の揃え方や使い方、手入れの仕方。納屋に展示物のように父が並べて置いていた道具を想う。
父も使っていた名前のわからない古い道具は、針金切りペンチとでも呼ぶことにし使い続けていこう。