遡行
2023, May 05
好きな言葉は?の問いにひとつは初期衝動と応えていたけれど、遡行と言い替えてみるのもいいかなと想うと、Back to the Rootsの言葉を乗せた音楽が頭の中を巡って止まらなくなった。
夏日。座椅子にもたれ怠くなった脚を棄てるように投げ出し動かない。
外に出て小さな橋の処まで行くと、スピーカーから流れる声が聞こえる。大きな病院の其の向こうの大きな多目的施設でイベントがあるのだろうか。ゴールデンウイークだったことを思い出し、手前の広場でも何か行われているのだろうと想うと、人波が頭に浮かび押し潰されそうになる。虫の音や蛙の大合唱や蝉時雨を騒音と想ったことはなく、耳にも育ち方があるのだろうか。
頻繁に釣り人が現れてのことだろうか。橋の下に屯っていた魚が見られることは滅多になくなり、鳩だけが残った橋はなんだか以前より汚く見える。川の流れはどちらから来てどちらへ向かっているのか判らない。
先程マスクをするのを忘れ玄関から肆拾秒ほど歩き家へ戻ったけれど、何処へ行こうと想うわけでない。ちょっと川を見たくなっただけなのだけれど、近くの川では気分が出ない。Back to the Roots。ライ・クーダーのスライドギターの音を耳に鳴らし遡行を考える暑い日。東山魁夷の道の絵が浮かんできた。