机の脇の棚の壱番下に数冊入れてある家具や雑貨のカタログを破棄しようと想うようになった。絵を描くときの参考にしようと残しておいたけれど、是までと違う暮らしになり同じやり方をしていても仕方ないことに気付いた。
　カタログを抜き取り気に入った頁を破り、取り敢えずファイルに入れる。あとで整理したら、ひとつひとつ素描していこう。
　詩でも絵でも寫眞でも、誰かに見せるとか誰かに喜んで貰うとかでなく、自分をまとめていくため（或いは正していくため）に描くのが今は愉しい。
　誰も知らない、誰も見ることない、見ることのできない小さな世界にぎゅっといろいろなものが詰まっているのを想像し、素敵だと感じふふっと笑う。こっそりが好き。できれば人前なんて決して出たくない。でも透明人間にはなりたくない。隠れているのがいい。相手が子供でも猫でも鳥でも。
　カタログを抜き取った場所が空き、棚の上に置いた籠の中を整理する。其の手前にリトルミイの描かれたペンケースを置き、横に伊藤若冲の絵が描かれたクリアファイルを添えた。想い立ったら素描に移せるように。夏に向け少し軽くなろう。