例えば秘密のノートに記すように。

       cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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亀の産卵


 久し振りに自ら布団を抜け出した大きい方の亀に、やっと朝夕が冷えなくなったと想っていると、妙な行動をし始めた彼女に不安になった。甲羅を引き摺り廊下を大きな音を立て歩いていくのは珍しくないけれど、鳴き声をあげている。小さい方の亀はよく鳴くものの、大きい方の亀は滅多に鳴かない。
 以前は夏前の発情期になると、こちらが困ってしまうほど後を付いて廻られたり求愛行動をされたりしたものだったけれど、此処何年かは落ち着いたものだった。
 軒下に置いた水槽に入れると普段通りだったのと、今日も家族が検査で出掛けていくのにバタバタしていたこともあり、昼になると亀のことは気に掛けなくなっていた。

 夕刻帰宅した家族が亀を家に入れようとし声をあげたとき、やっと訳を知った。昨夏初めて卵を産んだと想っていたら、また産んだらしい。無精卵なので子は孵らない。
 何年経っても彼らにとり何が幸福なのかあたしはわからないままでいる。ただ最後まで一緒にいることしかできない。そして拾ってしまってよかったのだろうかと今も時々想ったりする小さい方の亀をみつけた場所の環境が、拾ってすぐ変わってしまった(見方を違えれば変わり果てた)ことを思い出すと胸が痛くなる。

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