なんでもないこと
2024, Jun 14
券を溜め小さな棚を貰ったとき、彼は溜まった試しが自分にはないと言い驚いていた。棚は、最初はカセットテープの整理棚に、次は捌ミリテープの整理棚になり、此処に越してくると小さなものを入れる飾り棚になった。玄関の上がり口に其の棚を置き、上に薄紅色のペッパーベリィの乾燥花を入れた小さな如雨露置き隣にスリッパを入れた籠を置いた。
どうして此れに気付かなかったのだろう。弐階の部屋の住人が引っ越したのをいいことに、夕食後板と金槌と釘を持ち簡単な棚を作り、玄関の上がり口に置いた棚を彼の部屋に移し、其の上に作った棚を乗せた。其れは線香立てと香炉を置くに丁度いい高さだった。実際新しい部屋に合わせてみなければわからないが、もっときちんと作ってこのまま仏壇にしてしまってもいいなと想えた。
赤いケイトウと白いポンポンダリア、それとまだ青いブルーベリィの実を挿した瓶の水を替え、おやすみを告げる。今日、彼に最初に強請ったものがみつかった。怒って手紙と一緒に棄ててしまったとばかり想っていた。
ごめんねと言い、和室に飾った寫眞の前に置いた指輪の隣に置くと、うんと小さく応える彼。なんでもないことだと云うように。