おだやかな日々を
2025, May 08
別室に呼ばれ母の状態を説明されるが、心不全の再憎悪はなく、低栄養と脱水傾向がみられる以外に目立った異常はみられないと言われる。老衰の過程に入っていると考えられる、云うのが医師の見立てだった。
飲食は捌割くらい取る日もあれば、殆ど口にしない日もあり、眠っていることが多いが声を掛ければ反応があるそうで、自然経過に委ねることにした。
病院を移る必要があり、リハビリテーションの病院でもあり施設でもあり最後までいていいと云う壱番近くの処へ打診して貰うお願いをして部屋を出た。
母が此の家に帰ることはないだろう。
参箇月半、ふたりで暮らした。クリスマスにケーキを用意し、正月に蟹や海老を食べ、母の誕生日に鮪寿司をこしらえ、桃の節句にはちらし寿司を。そうして少しづつ空き巣事件から解放されてきたのに、母の心身の負荷は相当なものだったことがうかがえる。
あたしもあたしでかなり白髪が増えた。土地の賃貸借契約のことで参晩で、それまで弐、参本しかなかった白髪がわさっと生えたが、其の比ではない。悲しみであたしに白髪はできない、睡眠障害のようなことにもならない。悩みでもそうならない。侵害、と、重い言葉が頭に浮かぶ。
母ともいろいろあったけれど、彼女にはただおだやかな日々を送って欲しい。