例えば秘密のノートに記すように。

       cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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雨の日のお留守番


 今日は検査だけだから、と家族が言うので、森のある町へ一緒に行くことなく家で過ごす。
 外は雨。近くの食料量販店に卵と牛乳を買いに行き、少量パックされた鰯をみつける。帰宅しすぐに捌き保温調理鍋に入れ、あとはひたすら机に向かう。映画を観たり手紙を書いたりもしたいけれど、ひとつが精一杯。
 雨音に耳をすまし、暦にクリップで留めた弐枚のライブのチケットに時々目をやっても、其の場所にいる自分が想像できない。何処か落ち着かず上の空になってしまう。
 大丈夫、平気、とそう口にしていると、本当にそうなってくるのが好き。どうせなら心を入れ替えることなどなく私利私欲に走る嘘吐きで勝手し放題の人間のまま一生を終えてくれと誰かに望んだりもするけれど、汚い言葉は口にしたくない。雨音に乗せるのは前を向く自分。ひとりで過ごすときほど、沸きあがる感情を抑える。それから夜は遅くまで起きていないし、間違っても手紙を書いたりしない。
 自分の為と降り続く雨に壱杯の珈琲を。砂糖は入れずミルクは多めに。今日も明日も明後日もいつもの自分でいるように。

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