西日の射す部屋
2024, May 05
薄手の手袋をしていても、爪に土が潜り込む。雨あがりの日、草の匂いが鼻につく。
余りにも伸びてしまった草をどうしていいか迷い、石畳の上壱枚壱枚にまとめてむしった草を乗せる。乾けば嵩が減るだろう。次に来た時にでも袋に詰めればいいかあ、なんて。
洗濯し、敷物を替え、冬物をしまうとくたくたになってしまい、買い物は鮪の切り身になった。
夕食は握り寿司に出汁巻き卵、茄子のうりもみ、大根のお味噌汁でおしまい。
奥の部屋に西日が射すのを眺めながら、此処を台所にしてそっちを自室にするのが壱番だな、とにんまりする。
熱い薬缶の痕を付けてしまったと想っていたとうさんの縁台を改めて見てみると、薬缶の痕にしては小さいので首を傾げる。然も白い痕は数箇所ある。勘違いをしていたのだろうか。
試しに薄茶色のオイルを塗っていくと、白い痕は表面に乗っていただけらしく剥がれていった。
とうに無くなってしまった家を頭に浮かべると、狭い掃き出し窓に西日が乗って綺麗だったことを思い出す。あれも父が考えた家だった。