陽射しに
2023, Apr 14
台所に入る朝の陽射しは暖かくなるにつれ窓辺に移り、卓の上に乗らなくなってしまった。代わりに流しから椅子を滑るように照らしている。
夏になりすっかり陽射しが入らなくなるまで、朝だけ窓に遮光カーテンを掛ける。せっかくのたんぽぽの刺繍入りのレエスのカーテンは隠れてしまうけれど、致し方無い。
家にいても日光に油断はできず、ときどき髪を結わえずおろしたままにしている。洗濯物を干すときに手袋をしたらいいかと想い乍らしたことはないけれど、此の夏はどうだかわからない。
きいろに染まるレエスのカーテンに、こんなに美しい色・・・と感じるのに、もう或の光の中に身を任せることはないだろうと想うと、せつないような気持ちになる。其の中に飛び込んで見えるものと其の外へ弾かれ見えるものとあるけれど、陽射しとて同じこと。そしてふたつを通し初めて知る自分の形。
あたしを通り過ぎていく陽射しに振り返りはしない。其の中に亀たちを置いてやると、彼らは気持ちよさそうに目を閉じていた。