陸橋にて
2024, Nov 26
陸橋の長い階段を久し振りで上っていく。以前息が苦しくなったことがあり心配したものの、全くそんなこともなく上り切る。高い場所へ行くと清々しい気持ちになる。風が強い日は軽い目眩を覚えたりするけれど気にしない。
欄干に立ったはいいが、線路の向こうに眼を向けられなかった。太陽が射してくる位置と丁度重なっていてまぶしい。た。富士の山は今日は見えるのだろうか。青空に問いかける。
何処にいても彼を感じてしまうのは仕様がない。特にコロナ禍になり其の間彼が病気になってからは一緒にいることが多かった。とは言え、何故彼との記憶のみが生々しくあるのだろうか。陸橋の上で寫眞を撮ったことや、小さな実をみつけ一緒に不思議がったことや、辺りを歩き廻ったことのひとつひとつを感触で憶えている。
ともだちと過ごして愉しかった記憶を想ってみると、記憶は愉しかったと云う言葉と事実とで蘇るが、感触は薄い。其処にある筈の静物は殆ど浮かんでこない。
眼と耳と鼻と頬と指と・・・、其れを余すことなく使うほど彼といるときはリラックスしていたのかもしれない。
陸橋を下りる前に長い息を吐いておいた。