菜の花
2025, Jan 23
遠くに見える山並みがいつも青く美しいとは限らず、今日は空に薄く形が浮かんでいるだけだった。それでも自分の住む町で山並みが見られるなんて、今までは考えられなかった。
風も余りない晴れた午后。土手の道沿いに、ひとつふたつと咲き始めた菜の花があった。これから日毎に暖かくなってゆくのだと勘違いしそうになる。
川をふたつ越えてきた町は以前住んでいた町より気温が低い。ただでさえ他人より冷たい手が今にも泣き出しそうで、リュックサックに入れてきた手袋を探し菜の花の似合わない自分に笑う。
未だに隅に置かれたままの読みかけの本に、ノートパソコンに、ブルーレイのリモコンにCDラジカセ。
菜の花を失敬してくる頃には自分の部屋ができあがっているといいのに。