白
2025, Jun 05
莟だったノコギリソウの花が開く。紫陽花のうすみどりがかった白に比べ、ノコギリソウは何の混じり気もない白に見える。どうせならと彼の傍に置いた花瓶から赤紫のノコギリソウの花を抜き取り白だけの花にすると、泣いてしまいそうになった。
華やかな気持ち、浮かれた気持ち、弾んだ気持ち、悦びに嬉しさに愉しさに、落ち着いた気持ちに凛とした気持ちに透き通るような気持ちに、・・・・、と好きな気持ちは白に通じている。其れは黒も同じ。そしてそれらは光と影へと向かう。
夕刻が近付く頃、顔から汗が零れた。妙に躯がふらふらする。熱中症になりかけていたようだ。水分を取り横になり目を閉じる。
再び目を開けたとき、飛び込んできたのは窓の向こうのもこもことした真っ白な雲だった。大丈夫。そう言ってすくっと立ち上がる。
白。あたしの内で発光するもの。