漂泊者
2024, Mar 26
バスの時間がまた変更されていた。丗分は待たねばならず、歩くことにする。坂道を上り橋を行く。
下に見える土手には菜の花が咲き、風が気持ちいい。いつか或の道をずっと先まで歩こうと想う。確かもうすぐ櫻も咲く。川の水は少なく今日は青にも緑にも見えない。遠くの山脈も空に並んでいない。夢のような光景にいつでも逢えるわけでない。ただ歩いている人は見当たらず、時折自転車が追い越していくだけ。
鳥の姿を探すけれど鴉さえみつからず、それならと自分で声をあげる。「最後のコインは何に使うのさ」「Baby,野良犬にさえなれないぜ」。
冬のコートは置いてきた。昨日まで寒くかあさんの(たぶん)うさぎの白いコートを借りていた。今日は着てきた春秋用の黒のコートで大丈夫。大きなストールを首に捲いている。
橋を過ぎても歩き続けた。幾つ停留所を過ぎたろう。そろそろ時間かと想い振り向くと、道の先にバスが見え手をあげた。バスは少し行くと橋に差し掛かった。大きな川を越える都度町の様子が変わる。
あたしは留まっても定まってもいない。流れている。