例えば秘密のノートに記すように。

       cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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春キャベツに


 春キャベツを買う。外側の真っ青な葉は落とさず、其のまま持ち帰る。
 キャベツ売り場の傍には大抵塵箱が用意され、キャベツを買おうとすると剥かれた大量の青い葉を眼にすることになる。其れが春キャベツだったりすれば尚更覗き込んでしまう。
 お味噌汁に入れたりごま油で炒めたり、火にかける時間を少し多くすれば真っ青な葉もやわらかくなりおいしく食べられる。レタスの真っ青な葉も大根や人参の葉もおいしいと想う。小松菜はちょっと苦手だけれど、青物は大概好きかな。少し青いトマトも青臭いと想ったことはない。
 春キャベツは庭に拡がる草原(くさはら)の記憶や麦畑を駈けた記憶、自分が人間だと特に意識することなく猫と一緒になって鳥を見ていた記憶に通じる。
 何処かに脱ぎ忘れたスリッパ。台所に裸足で立ちキャベツを手に持てば、小川未明の童話のように蝶が声を掛けてくるのではないかと想い眼鏡をはずして待っている。

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