後ろ姿
2024, Apr 03
郵便局へ行く用事がてら、ゆきやなぎに山櫻にこぶし、馬酔木、花蘇芳、レンギョウ、と壱斉に開花した町を歩く。途中ベンチに腰を下ろすと、おもむろにリュックサックから水筒を取り出し、ほらと差し出す彼の姿を感じる。毎日一緒。
色や音や匂い、と云ったものに拘る性質。そう云う感覚を持ち是まで過ごしてきたことは無駄でなかったらしい。
空気や間に彼が存在している。
並んで歩くことはそれほどなかった。いつもあたしが遅れて歩いていた。
猫と出逢い夢中で遊んでしまったり、荷物が重い陽射しが暑いと言い不貞腐れて腰掛けるところでない処に座ってしまったり、毛虫をみつけ先に進めなくなってしまったり、そんな具合だった。
外にいるときは、彼の後ろ姿ばかり見ていたように想う。
細い躯と姿勢のいい歩き方。ときどき逆光の中でこちらを向いてあたしを待つ彼。
今度ばかりは随分先に行ってしまったなと想い歩いている。こう云うときは必ず何かみつけた処で待っていてくれたっけ。
何をみつけたのかはわからないけれど、いつものようにきっと笑えるくらい素敵なものだと想う。