引き出しの中の物
2025, May 20
入院中母の使っていたタオルや寝間着を洗濯し、レンタル代に入院費と支払いを済ませる。
入院用の前開きの寝間着は全部で伍枚。壱枚は寒がりな母の為に用意した厚めのものだったが、薄いものをと言われ必要なくなった。どれも拾数年前の入院時に使用したもので、また入院するとき慌てないようにと母に言われ、バスタオルと一緒にしまっておいたものだった。
厚めの寝間着は少し高級なもので柄も綺麗で、母が勿体ないと言っていたことを憶えている。そのうち自分が家で着るようになるのかもしれない。
薄手の寝間着はどれも血の染みができてしまった。元々血管が細いところに来て痩せた分、点滴の針がなかなか通らなかったのだろう。腕や股についた痛々しいほどの青痣を思い出す。
割と凝った釦がついていると乾いた寝間着をたたんでいると、参枚は同じような釦だった。ネームにグンゼと記された寝間着だった。それで拾数年前此れもあたしが用意したことを思い出した。
あたしは「いつか」に向けて物をしまっておくことはないだろう。使うことのなかった母の物は結構あって、泣きたくなる。