例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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夢の中で


 気が付くと女性に組み伏せられ胸をさわられ唇を奪われようとしていた。突然のことに声も出ず抵抗するのが精一杯だった。
 頭上で大きな声がしたかと想うと其処には彼が立っていて女性を追い払ってくれた。

 一緒に帰り道を歩き出すと、眼の前にいっぱいの芥子の花が拡がった。其処は山道だった。
 他の登山客の後をついていくと、雄大な景色が現れた。中央に其れは見事な足のふるえるほどの深い谷が見える。

 谷を過ぎると日本とは想えない場所に出た。窓のないコンクリートの建物がぽつりぽつりと建っている。物蔭には軍服と想われるものを着用し、腰を低くし銃を構える者が何人もいた。彼の腕を摑み引き返そうとすると、女性の声に呼び止められた。女性は彼女ひとりだけと見える。口振りから上の立場の者だと窺がえる。男だけ残れと彼女は言った。あたしが彼の腕を放さずにいると、後で返してやると言われたが、目つきと唇の端で嘘とすぐに判る。
 すぐに銃を向けられ、あたしは彼を抱き上にかぶさるような形で倒れた。殺されたと想ったが生きている。銃は放たれなかったのだ。そう言えば音を聞いていない。
 どう彼女の隙をついたのだろう。彼の手を引き走っていたことと、国境線を越えたことだけを憶えている。

 目覚めると脚がだるかった。
 夢の中で助けられたり助けようとしていたり・・・。例え夢の中であたっとしても、助けられてばかりでないことが嬉しかった。

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