例えば秘密のノートに記すように。

       cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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ハートに風穴


 仕方ないと笑う。すうすうする胸。風穴が開いているのを感じる。

 今日黒い袋に入ったうがい薬を棄てた。治療で口内炎ができたときに使っていたものだった。壱本は手つかず、壱本は殆ど中身が無かった。盆に入る前に頼んでおかなきゃ、と言っていたのを憶えている。
 そんなものにさえずっとさわることができずにいた。さわったらさわったで胸がいっぱいになり今日も泣いてしまった。

 失うときは何故壱度で済まないのだろう。得るときは壱度なのに。其れもだいじになるほど壱瞬で。・・・と想い、失うときそうでなかったものがあったことを思い出したけれど、胸にとまったことのないものは数に入らない。

 すぐに棄ててしまう覚え書きの文字や絵が青ざめた血を流すようになった。青ざめれば青ざめているほど、覚え書きを棄てた後あたしは静かに笑っている。日本特有のことだと何かで読んだことがあるが、どうなのだろう。
 時々眺めるモディリアーニの絵葉書の人物はみな静かで、もう少し大きな複製画でもみつけたなら求めたいと想う。

 風穴は物心ついたときから胸に開いていた。けれど、今度の風穴は余りにも大きい気がして持て余している。
 此の頃あたしは本当によく笑う。

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