例えば秘密のノートに記すように。

       cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

忍者ブログ

頁を戻る頁を捲る

オレンヂと炭酸水


 オレンヂを全部食べてしまい、乾いた喉を潤そうと選んだのは桃味の炭酸水だった。折角の炭酸水なのに、リトルミイのコップに注いでも胸はそれほどドキドキしない。まだ夏ではないから、オレンヂの方が似合う。
 あまんきみこさんの「車の色は空の色」はどの辺りに入れたのだっけ、と書架を想うけれど取りにはいかない。思い出しただけでオレンヂが香ってくる。或のオレンヂは夏蜜柑だったかなと想いながらうっとりする。
 眼の前に無いものの形や色や匂いを思い描けるようになったのは、或の物語がきっかけだったと想う。

 昨日途中にした映画の続きを観る。御伽噺のような物語。大好きな人にさよならを言えなかった少女、やわらかな躯と心を持つ少女。
 子供の頃に初めて覚えた喪失を、自分は長い時をかけ少しづつ風や草に放ってきたけれど、匂いは消えず残っているのかもしれない。

 ともだちの家に遊びに行きジュースが出され、両手でコップを持って飲んだら笑われたことがあったけれど、特に炭酸水が入っていると子供に戻って両手でコップを持ってしまう。(おにぎりもそうして食べると言われたけれど)
 傷みたいなものが消えない。其れをどうにかしようとも想わない。其れが浮かんだら、今はちょっと笑いかけたりしている。頬にかかる炭酸水の泡だったり、鼻をくすぐるオレンヂの匂いだったり、に其れは本当によく現れる。

拍手

      郵便箱

   
 内緒で

* メールアドレスは表示されません。