例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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アメリカンチェリーの季節


 ところどころ破れのある障子を、貼りかえずに黄ばみをとり綺麗にしようと考えた。
 漂白剤を薄めた水を霧吹きし、暫し見に行くと障子紙は随分白くなっていた。掃き出し窓側の壱枚は霧吹きがうまくできなかったらしく、上の方に黄ばみが残ってしまった。新しい障子紙のようにはいかない。けれど、こざっぱりし気持ちがいい。あちこち直し甲斐のある家で、と笑う。

 褒美と云うわけでもないが、アメリカンチェリーを買い、彼と分けて食べる。ひとり分に丁度いい、本当に小さなカップに入ったアメリカンチェリーは可愛らしく、久々に棚の奥から内側にもすみれの描かれた小皿を出し盛り付ける。
 そろそろ麦わら帽子をかぶってもいい季節だろうか、などと想っては、そう言えば・・・、と口にすると、ああ、と応える彼の目が泳ぐ。
 飾りはスナフキンみたいなの、と言う彼のリクエストに応じ編んだ帽子を、初めてかぶった其の日に失くしてくるような人だった。

 扇風機の風はまだ冷たく鳥肌をたてた腕。
 とうに愉しみな予定など持たなくなったのに、今年も色鮮やかな夏を想い描いている。

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