より良い
2024, May 24
伍時になると亀が騒ぎ始める。バタバタした音で目が覚めるようになった。
洗面所で顔を洗いながら、伍時肆拾分台所に陽射しが入る様子を眺める。それだけでも此処に越してきてよかったと、其の様子を見る都度想う。
流しの前の出窓が明るくなっている。朝のやわらかな光がレエスのカーテンを薄きいろに染めている。大きなたんぽぽの刺繡入りの柄にして正解だった。いつまでも眺めていられる夢のような光景。
出窓に置いたカップに入れた乾燥花や乾燥花を入れた硝子瓶も、光をまとったきれいな色を見せる。時々置かれる生け花、檸檬、ブラッドオレンヂ、・・・。
越す前は玄関の扉を少し開け、昨夜の名残の月や未明の空の藍色を見るのが好きだった。其れはもう遠い記憶。
だいじだと想ったことは時が経っても昨日のことのように感じられるのに、それ以外のことは遠くなる。
小さな亀たちがあたしを見上げている。より良い世界を想うように、より良い自分の周りと自身を想う。