例えば秘密のノートに記すように。

       cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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だんだん春


 足を滑らせたと想った次の瞬間、尻で浴室のタイルの上を滑っていた。
 浴室で転んだのって父が生きていた頃だから拾数年前だったと想う。或のときは何もなかったけれど今回は、と心配していると片脚が少し傷むようなと感じたのも束の間なんともなく済んだようで安堵する。
 浴室でセーターを肆枚手洗いし、タオル掛けに掛け軒下に出す。が、陽が照っているのが気になり、水が落ちなくなると玄関の上がり口で干すことにした。
 もう炬燵も片付けようかと昼は考えるのだけれど、夜ノートパソコンを触るときは炬燵布団がまだあってもいいなあと想ってしまう。
 だんだん春。夜になっても足や尻が痛むことなく胸をなでおろす。変温動物の亀たちさえ活動的になったのだもの、わけもなく珍しく頑張ろうと想っているところ。怪我はしたくない。
 明日になって痛まないことを願いながら布団に入る。それから明日は何を着ようかと考えながら。

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