例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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ぷちぷち


 緩衝材で乾燥花を包み段ボール箱に入れていく。リースは適当な箱に入れ、隙間に布製の手提げ袋を詰めた。砕けたなら砕けたで、損傷の軽いものを拾い集め硝子瓶に納めればいいだけのこと。
 それにしても、これだけで大きな段ボール箱が埋まってしまうとは想わなかった。

 テレビ用の箱がないと知ったときは焦ったけれど、毛布に包めばいいとわかりくすくす笑う。にゃんとかにゃるさあ。人形を詰めた箱に落書きをして舌を出す。自身で自身を励ますことは嫌いじゃあない。
 休憩に珈琲を口にしながら、気泡の緩衝材の端を抓んで押して潰して遊ぶ。ぷちぷちと鳴る音が小気味いい。
 明日からはレッド・ホット・チリ・ペッパーズのスカー・ティッシュでも聴きながら荷造りしようか。

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波間


 彼の後を追い自転車を走らせていた。道の先はみっつに分かれている。中央の道はトンネルだった。
 左に寄る彼に合わせ左に寄ると、間違えたのか彼はハンドルを切り右へ寄ったが、後方から車が近付いてきたのであたしはそのまま左を走った。車は弐トン車程の大きな車両で彼が見えなくなる。
 車が行ってしまうと、あたしは途方に暮れた。彼がどの道を走っていったか判らない。自転車を止めわんわん泣いた。泣きながら、きっと戻ってきてくれると想っていた。

 夢を見ていた。目覚めて時計を見ると午前参時半を廻ったところだった。其の後漆時半まで眠った。
 心は絶えず波間に浮かぶ舟のようにゆらいでいる。
 昨日買ったチョコレイトの包みを開けた。ネーブルオレンヂのピールが入ったかすかに苦さと酸味が加わった味が口の中でゆっくり溶けていく。
 備わるものが備わっていない舟と櫓で渡っていくには海は廣すぎて、不安に襲われることがある。

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キリマンジャロ


 リュックサックの中にはキリマンジャロの豆が入った袋がひとつ。いつも珈琲豆を買いに行く食料量販店の帰り道、キリマンジャロがあったねと彼に話し掛ける。
 最後にみつかってよかった。それとももう一度出掛けることができるだろうか。

 帰宅後も、キリマンジャロがあったねとまた話し掛ける。
 キリマンジャロの酸味が好きだった彼。いつ袋を切ろうか。考えてどきどきする。高鳴る胸を抱え、今日の不安を遠くへ押しやる。
 久し振りにチョコレイトも買ってきた。大概のことはどうにでもなるどうでもいいこと。大丈夫。混乱したくない気持ちをちょっと足で蹴ってみた。

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冬支度


 早くも拾月も終わろうとしている。夜明けは遅くなり日暮れは早まった。窓を照らす光はいちだんとまぶしいものとなり、夜に点る灯りはいちだんとやさしいものになった。
 きんもくせいの匂いが消えた町で、あたしはピラカンサスが燃え上がる日を待っている。鳥も食べないと云う或の真っ赤な実を口にしたらどうなるのだろう。想像するのは愉しく、冬の夜は滑り込みやすく、此の冬の夜も身を委ねきりで過ごすのかもしれない。

 蘇芳色のベストがやっとできあがる。大きさも襟ぐりも丁度良く、やり直した甲斐があった。似合う服は持っていない。寝間着の上に着て夜の友になってもらおう。
 そろそろ膝掛けを出さないと。

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オノマトペ


 普段重い物を持つことがなかったからなのか、左腕が痛むようになった。筋肉痛なのか、筋を痛めたのか、判らない。角度によってはつきっとした痛みが走ったりする。
 首を振り、肩を廻し、背中を意識し、壱日壱度躯をほぐす。朝だったり夜だったり時間は定まらず、思い出したときに動かす。
 ふりふり。くるくる。のびぃ。さすさす。にゃあ。・・・。擬音語と擬態語の連発。ぱたぱたと動くちょっと愉しい時間。すっきりしたあとでにかっと笑う。

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