例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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胡桃の卓


 少しづつ汚れていく胡桃の卓を丁寧に拭く。あちこちに付いた傷を撫でる。
 彼が選んだ。彼が座っていた。消えない記憶。
 其の卓でご飯を食べる。珈琲を飲む。文字を書く。肘をつく。
 あたしが付けた新たな傷はどれだろう。混じってわからなくなっている。
 続いていく。続いてきたように。
 波の音が聞こえる。繰り返し、繰り返し。やさしい音。彼も是も其れも、みな生きている。あたしが絶えるまでは。

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      郵便箱

泣きそう


 病室を見舞うでも数年前とは勝手が違う。母がこのまま家に帰ってこないことが判り、親類にも母のことは話さずにいた。
 見舞いに行きたいと壱番年嵩のいとこに言われ遠慮したが、結局一緒に病院へ行くことになった。母はずっと眠っていて起きずに残念だったが、自分は久し振りにいろいろ話ができよかったと想う。
 御見舞いの袋を差し出され、数回断っても受け取って欲しいと言われ、最後には受け取った。あたしにまで葡萄と桃の入った袋をくれ、泣きそうになる。七七忌の日に迎えに行こうかとまで言われたとき終わらないやさしさを感じた。やさしい人ってひとつ物をくれておしまいじゃあないので、そうでない人との違いが明確にわかる。
 そして、ずっとやさしいおにいちゃんだったのだと想い、また泣きそうになる

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      郵便箱

ベリィショート


 鬱陶しい長さになった首下の髪を束ねようとしても、毛先の量が少なくすぐにゴムが抜けてしまう。束ねられるまでこのまま伸ばすか、また同じ髪形に切ってもらうか、今度は後ろを短く切ってもらうか、考えた末短く切ってもらうことにした。
 久し振りのベリィショートにした頭が軽い。
 より空気が冷えてきたら、首に刺繡入りの大きなストールを捲き、耳にイヤリングを下げよう。ストールは黒灰色、イヤリングは鰐や陰陽をあしらったもので、此の町に似合わない気もするけれど。きっと其れは何処へ行っても同じこと。
 此の秋も、誰も歩いていないような散歩コースがみつかるかもしれない。

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休息


 生のひじきが売られていたので、油揚げと一緒に籠に入れる。
 人参や大豆も買えばよかったかなと想い家に帰る。
 家に乾燥のおからがあったことを思い出すが、買い物だけで疲れてしまい台所に立つ気は起きなかった。

 夕食は黒米入りご飯に冷凍コロッケ、豆苗とトマトのサラダに水茄子の塩もみ。食後のアイスクリイムはしっかり食べる。
 壱日パソコンをさわっていなかったことに夜になり気付き、就寝前にパソコンを開く。

 休息の日の判断ができないあたし。今日が其の日だったかと想い、休息がうまくできなかったことに落ち込む。
 落ち込んだ後で課題がみつかったのはいいことだと布団を敷く。
 窓の外、今夜も烈しい雨になっていた。

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電話が鳴り


 数日振りに、朝、家の電話が鳴る。放っておく。拾回ほど鳴った後おとなしくなる。また、始まったかと想う。
 数日振りに、昼、家の電話が鳴る。放っておく。参回ほど鳴った後おとなしくなる。またか、と想う。
 数日振りに、夕刻、家の電話が鳴る。放っておく。伍回ほど鳴った後おとなしくなる。笑ってしまうほど毎回毎回機械のように壱日に鳴る時間に回数が同じだ、と想う。
 或る意味凄いなあ、と想う。逆に感心してしまう。何故毎回毎回こうも同じにできるのだろう、と想う。
 よおう天晴れ、とお道化てひとつ手を叩く自分。人間のすることはわからない、と言い今日もカエルになった自分がいる。

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