例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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泣きそう


 病室を見舞うでも数年前とは勝手が違う。母がこのまま家に帰ってこないことが判り、親類にも母のことは話さずにいた。
 見舞いに行きたいと壱番年嵩のいとこに言われ遠慮したが、結局一緒に病院へ行くことになった。母はずっと眠っていて起きずに残念だったが、自分は久し振りにいろいろ話ができよかったと想う。
 御見舞いの袋を差し出され、数回断っても受け取って欲しいと言われ、最後には受け取った。あたしにまで葡萄と桃の入った袋をくれ、泣きそうになる。七七忌の日に迎えに行こうかとまで言われたとき終わらないやさしさを感じた。やさしい人ってひとつ物をくれておしまいじゃあないので、そうでない人との違いが明確にわかる。
 そして、ずっとやさしいおにいちゃんだったのだと想い、また泣きそうになる

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ベリィショート


 鬱陶しい長さになった首下の髪を束ねようとしても、毛先の量が少なくすぐにゴムが抜けてしまう。束ねられるまでこのまま伸ばすか、また同じ髪形に切ってもらうか、今度は後ろを短く切ってもらうか、考えた末短く切ってもらうことにした。
 久し振りのベリィショートにした頭が軽い。
 より空気が冷えてきたら、首に刺繡入りの大きなストールを捲き、耳にイヤリングを下げよう。ストールは黒灰色、イヤリングは鰐や陰陽をあしらったもので、此の町に似合わない気もするけれど。きっと其れは何処へ行っても同じこと。
 此の秋も、誰も歩いていないような散歩コースがみつかるかもしれない。

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休息


 生のひじきが売られていたので、油揚げと一緒に籠に入れる。
 人参や大豆も買えばよかったかなと想い家に帰る。
 家に乾燥のおからがあったことを思い出すが、買い物だけで疲れてしまい台所に立つ気は起きなかった。

 夕食は黒米入りご飯に冷凍コロッケ、豆苗とトマトのサラダに水茄子の塩もみ。食後のアイスクリイムはしっかり食べる。
 壱日パソコンをさわっていなかったことに夜になり気付き、就寝前にパソコンを開く。

 休息の日の判断ができないあたし。今日が其の日だったかと想い、休息がうまくできなかったことに落ち込む。
 落ち込んだ後で課題がみつかったのはいいことだと布団を敷く。
 窓の外、今夜も烈しい雨になっていた。

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電話が鳴り


 数日振りに、朝、家の電話が鳴る。放っておく。拾回ほど鳴った後おとなしくなる。また、始まったかと想う。
 数日振りに、昼、家の電話が鳴る。放っておく。参回ほど鳴った後おとなしくなる。またか、と想う。
 数日振りに、夕刻、家の電話が鳴る。放っておく。伍回ほど鳴った後おとなしくなる。笑ってしまうほど毎回毎回機械のように壱日に鳴る時間に回数が同じだ、と想う。
 或る意味凄いなあ、と想う。逆に感心してしまう。何故毎回毎回こうも同じにできるのだろう、と想う。
 よおう天晴れ、とお道化てひとつ手を叩く自分。人間のすることはわからない、と言い今日もカエルになった自分がいる。

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道筋


 夕刻、掛かってきた電話の声はくぐもっていた。
 期待していた案件が無理と判り、あたしが紙に書いて渡した案を他人に話してもいいかと訊かれ、承諾し電話を切った。
 伍年半前から起こった数々の出来事を想い返してみると、どれも無駄でなく、此処までのきれいな道筋に気付く。
 何が最良であるかは自身のことでないこともあり判断がつかないが、声の主の判断のひとつの切っ掛けになればいい。

 若い頃電話口の向こうで泣いてしまった友人に、人間は考える葦だって言うから、と、(普通)(誰も)不幸を望んでない、と、返しただけで、友人はうんと言ってくれたことがあった。

 あなたには笑っていて欲しい。
 あたしは頭が廻らないし素早く行動にも移せない。ただひたすら考える。そうすると道筋が見えてくる。そうして自分も笑う。

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