例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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薔薇の実


 薔薇の実をひと束買って帰る。ふたつに分けて花瓶に挿す。花瓶に水は入れない。
 乾燥花になるまでどれくらい時間が要るだろう。それまで毎日形を少しづつ整え活け直すのも素敵だろう。

 一緒に買ってきた紫蘇の実は、さっと茹でて湯がき、半分は塩漬けに半分はオリーブ油漬けに。
 何も言わなくても彼が酒のつまみにと想っているのは間違いなく、ひととき倖せな気分に。
 そして、以前薔薇の実をあなたがダメにしたことは忘れてないから、と付け加えるのは忘れずに、花瓶から零れた実を拾っては笑う。

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      郵便箱

ゆっくり


 はじめてでもできる基本の編み方が記されていると云うので、籐編みの書籍を購入した。
 籐の種類や名に編み方の種類に名に、と随分覚えることがあり、講座に通わなければ始めるにも自分には数年掛かっただろうことが想像できる。
 興味深かったのは籐も珈琲で茶色に染めること。少なくとももう壱度丸芯を購入することになるだろうが、其のときは珈琲で染めてしまおう。
 簡単なことでも束ねれば、より気に入ったものができる。

 父が遺した麻紐の捲きに、籠が編めるかなと呟いてから拾数年。相変わらず人に与えられた寿命を無視するかのよう、あたしの時間はゆっくり進んでいる。

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      郵便箱

暮れてゆく


 終わりになった曼殊沙華。熟した柿の実。色付いた姫林檎の実。
 日暮れが近付くにつれ花開くPink Baby's Breath。
 暮れてゆく空は赫く、赫く。林檎がひとつ胸へ転がる。あたたかくて淋しい。淋しくてあたたかな。

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籐編みの吊り籠


 小さなリングを伍つ繋げてつけて籐編みの吊り籠は完成した。リングの部分を完成させるだけで壱時間半。
 新たに始めるのは次からでいい?、と先生に訊かれ頷く。いいの?と先生の代わりに教えることができる方が苦笑いしながら念を押すように訊いてくれたので、うんうんと笑って頷いて返した。
 疲れてしまい、残り丗分は他の人のを見せてもらったり会話をして愉しんだ。

 あたしと同じ今期から始めた方は、ふたつめの作品にキャンディーボックスを選び完成させていた。蓋があるとそんなにも違うのかと驚き、可愛いと声を掛けると、蓋があると違うよねと言い蓋を取り、籠の方は底の編み方がすかすかになってしまったと笑う。
 同じように苦戦し同じように集中し完成させたものは、自分で見ると同じように粗がわかるのだろう。そして同じように他人のを見ては、可愛いと声を漏らす。

 次はどんなものができるのだろう。自分のはもちろん、他人のものも愉しみにしている。

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それもそれで


 花を求めに行くと店は臨時休業していた。
 先週求めたローゼルは枝が短くなり、小菊は半分になった。ローゼルはローゼルだけで、小菊は小菊だけで、其々花瓶に活ける。のびのびと枝や茎を拡げた花も華やかで素敵なら、小ぢんまりとまとまった花も愛らしく素敵だ。
 そんな花たちの隣で、彼の横に置いた林檎に手を伸ばし齧りつく。半分に切り種をくり抜きバターを詰め、トースターで焼いて食べようと想っていたのに、それもそれで素敵。
 今日も雨に濡れてしまった。くしゃくしゃになった髪。さっきまで首筋がすうすうしていた。それもそれで、と指先で髪をすくうように頭を撫でた。

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