例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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久し振りに


 雨の朝、今日は漆分袖の服にしてもいいと引き出しを開け、参年ばかり長袖のTシャツを購入していないことに気付く。
 ぬるい珈琲がおいしく、朝からお代わりをする。

 窓から入る風が気持ちよく、久し振りにおやつはチョコレイト。
 今年はセーターもカーディガンも編む必要はないけれど、自分と来客用のスリッパを用意しておかないと。

 今年は余りにも暑さが厳しかったからだろうか。夏を惜しんでないことに戸惑いながらも、気持ちは秋に傾いている。
 しだいに晴れてきた空がうらめしいほどだった。

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此の日々を


 秋の夜に向け、卓にLEDのキャンドルライトを置いた。目立った愉しみはなくなったままだけれど、ささやかな愉しみは集めたら花束にできるほど持っている。
 秋に向け小さな蒸篭を購入を考えている。野菜でも肉でも蒸すか焼くか、スープにするか、そんな食べ方が増えた。蒸篭ごと食卓に置いてもいいだろうか。今度もあたしより彼の方が気に入るような気がする。
 此の日々をなんて呼べばいいのだろう。未だに一緒に生きているあたしを彼はどう想っているだろう。(放っておきつつ、一緒にいるような・・・。)

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炭酸水


 蓋を開ける都度あんなにもと想うほど逸る気持ちにさせられていたのに、玖月になり急に炭酸水は色褪せてしまった。
 お気に入りのリトルミイのコップに注いでも、檸檬果汁を足しても、淋しさだけが胸に押し寄せる。
 小さな泡がひとつひとつ弾ける都度、夢を見ていた。其の大半は彼の夢。

 熱が冷めたらまた静かに過ごしていくことだけを考えよう。
 椅子に腰掛けると、いつのまにか片足を立てる癖がついた。膝の上に小さなまるい湖を見ては、何処からか飛んできた奇妙な鳥と頭上を渡る風を思い出し、気が付くと膝を撫でていた。
 あれはふたりで見ていた夏毎の風景。あたしの手にはいつもオレンヂの味の炭酸水。

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ただそれだけのこと


 壱本だけになってしまった竜胆。盆に入るので買ってきたものだった。
 菊を買ってきて肆日。真夏程ではないけれど、水の汚れが速い。菊は壱週間もたないかもしれない。
 久し振りに昼間冷房した。
 黒や白以外の服を着る気がますます失せ、パジャマにならないものはみな処分してしまおうかと想う。
 ただそれだけのこと。

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籐編み


 人の中に自分から入るのが苦手だが、苦手なこともちょっとしてみようと、無料の口座に応募した。ひと月に弐回籐編みをすることになり、捌月はパン籠を編んだ。
 弐時間余り集中し黙々と手を動かす間は、余計なことは壱切頭に浮かんでこない。
 飴色になるからね、伍拾年経っても使えるからね、と先生に教えられ、持ち帰った完成品に食パンを入れ台所に置いた。自分でこしらえたものが育っていくなんて、素敵だ。

 家にある吊り籠には土藤と記されたタグが付いている。土藤とは皮つきのことらしい。無骨さが可愛らしく気に入っている。底を見ると教えられた編み方に似ていた。
 玖月になり新たに何を編みたいか問われ、あたしが選んだのは吊り籠だった。パン籠も吊り籠も初心者向けだそうだが、底の編み方が難しく何度も解いてはやり直している。
 弐期目だが参期目だかの人たちは大きな大きな籠を編んでいるが、続ければいつか自分も編めるようになるかは疑問。

 同じ体験をした人の集まりに参加する気は今でもなく、自身に合った自身をほぐす参加の場がみつかりよかった。

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