例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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落ち着かない


 わけもなく家の中を歩き廻ったり、家具の配置を変えたばかりなのに変えてみたり、外に出ては草取りをしたり、と椅子に座っていられない。ひとりになると落ち着かない。
 疲れるまで動いて、電池が切れになった玩具のようにぴたりと止まり床に伏せる。壊れたわけではないから、と口にしては眠る。
 起きては、また其の繰り返し。

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今でも


 午后から母の面会に行く予定が、病院から連絡が入る。コロナ患者が出たので伍日明けてからの面会になるそうだが、其の間新たにコロナ患者が出ればまた伍日明けてからになる、と説明を受ける。
 全開の面会の日に丁度熱を出した母は、抗生物質を投与され熱は下がり落ち着いていると云う。けれど、年齢のこともあり余力が殆ど残っていないので、と言われる。
 苦痛でなければそれでいい。

 高齢や病気になった相手に対し、こちらが選択をしなければならない場合、どうすればいいか考えても尽きることはない。ただ、選択後、相手のおだやかな顔を見て間違いでもなかったと想い、最後の最後まで倖せを想うことはできる。
 そして、あたしは今でも夫の倖せを想っている。

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 ひとりになってしまったいとこと、ひとりで暮らすことになってしまったあたしと、兄ちゃんの家で夜を過ごす。
 何故だか縁切りを勧められ途切れた縁がある壱方で、必要とされる縁がある。
 適当な距離。相手を労ったり敬ったりする心。考えを押し付けられることも押し付けることもなく、会話の端に違和感を覚えることもなく、やさしい時間が流れていく。其れは夫が教えてくれ、夫と過ごした時間にも似て。

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捌月に寄せて


 捌月もそろそろ終わりかと不思議な気持ちで暦の数字をみつめる。
 此の気持ちはいつ終えるのだろう。終えずに続いていくのだろうか。それとも玖月になれば少しづつ小さくなっていくのだろうか。それとも捌月になれば毎年繰り返されるのだろうか。

 朝夕に線香をあげる都度、部屋は線香の匂いに満ちる。衣服に匂いが移ることはなく、タオルにしてもタオルの匂いしかしない。衣類に匂いのついてしまう昔の線香でいいのに。
 夏は特に黒い服しか着なくなったけれど、愛の言葉だと彼は気付いてくれるだろうか。

 捌月になれば村上龍の「悲しき熱帯」を再読したり中上健次の本を開き夏芙蓉の匂いを想像するだけの自分は遠くなり、これまで詰め込んできた歳月を想うようになった。
 死ぬなら雪の日に、とあれほど言っていたあたしなのに、今は捌月に逝きたいなどと密かに願っている。

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考えていたら


 いつまで経っても迅速に頭が巡ることはない。
 考えていたら、少しづつ見えてきた。

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