例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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道筋


 夕刻、掛かってきた電話の声はくぐもっていた。
 期待していた案件が無理と判り、あたしが紙に書いて渡した案を他人に話してもいいかと訊かれ、承諾し電話を切った。
 伍年半前から起こった数々の出来事を想い返してみると、どれも無駄でなく、此処までのきれいな道筋に気付く。
 何が最良であるかは自身のことでないこともあり判断がつかないが、声の主の判断のひとつの切っ掛けになればいい。

 若い頃電話口の向こうで泣いてしまった友人に、人間は考える葦だって言うから、と、(普通)(誰も)不幸を望んでない、と、返しただけで、友人はうんと言ってくれたことがあった。

 あなたには笑っていて欲しい。
 あたしは頭が廻らないし素早く行動にも移せない。ただひたすら考える。そうすると道筋が見えてくる。そうして自分も笑う。

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Pink Baby's Breath


 カスミソウにも似た桃色の小さな花をつける植物は繁殖力が強い。植木鉢のあちこちから顔を出すので、たまに引き抜いては、此れ以上増えないで、とお願いするばかり。
 ハゼランと呼ばれる植物らしいが、すぐに名前を忘れてしまう。別名を沢山持っているようだが、Pink Baby's Breathが壱番わかりやすく其の名で覚えてしまった。

 去年は少し摘んで、牛乳瓶に似た吊り瓶に水を入れず挿し、物置き代わりに外に置いた棚に掛けてみた。すぐに茶色になったが、今も吊り瓶に納まっている。
 まだ編んでいる途中の吊り籠が完成したら、今年は其処に入れようと想っている。問題はいつ吊り籠が完成するか。

 無料のトランペットかギターの講座もみつからないかな、とぼんやり想う。
 想いを巡らせている時間と集中している時間とが、自身を保たせてくれている。

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 此のところ毎日蚊に刺されている。秋を前にし必死なのだろうか。
 ふと、生きる為、と言い万引きしたりクスリをしたり売春まがいのことをしていた人たちを思い出す。出逢った年も出逢った場所も違ったのに、ふたりの言動はよく似ていた。

 あたしへの被害はあたしのことで嘘を吐くことだった。あたしの周りの人が其れを信じることはなく、気にもとめなかったけれど、今ならひと言くらい返すかもしれない。
 生きる為だとか必死だとかは免罪符でない、と。あなた以外の人間もそうして毎日過ごしているのだ、と。

 蚊取り線香をくゆらせた部屋で、ばんっと勢いよく蚊を叩き潰す。
 一緒にいた時間が多かった人たちだからと言い他に思い出すものがなく、思い出した傍からあっと言う間に消えていってしまった。

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久し振りに


 雨の朝、今日は漆分袖の服にしてもいいと引き出しを開け、参年ばかり長袖のTシャツを購入していないことに気付く。
 ぬるい珈琲がおいしく、朝からお代わりをする。

 窓から入る風が気持ちよく、久し振りにおやつはチョコレイト。
 今年はセーターもカーディガンも編む必要はないけれど、自分と来客用のスリッパを用意しておかないと。

 今年は余りにも暑さが厳しかったからだろうか。夏を惜しんでないことに戸惑いながらも、気持ちは秋に傾いている。
 しだいに晴れてきた空がうらめしいほどだった。

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此の日々を


 秋の夜に向け、卓にLEDのキャンドルライトを置いた。目立った愉しみはなくなったままだけれど、ささやかな愉しみは集めたら花束にできるほど持っている。
 秋に向け小さな蒸篭を購入を考えている。野菜でも肉でも蒸すか焼くか、スープにするか、そんな食べ方が増えた。蒸篭ごと食卓に置いてもいいだろうか。今度もあたしより彼の方が気に入るような気がする。
 此の日々をなんて呼べばいいのだろう。未だに一緒に生きているあたしを彼はどう想っているだろう。(放っておきつつ、一緒にいるような・・・。)

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