例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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新緑


 朝の強い風雨は治まり晴れ間が現れた空。橋の下を覗くと、川面には細かなさざ波が描かれ、今まで枯れ色壱色だった草むらにはところどころ緑が入り、モネの風景画を想わせていた。
 咲いていた菜の花は散りあちこちにすかんぽが顔を出すだけの土手は、遠くから見ると壱面緑にしか見えない。
 死ぬときは雪の降る日がいいと想っていたけれど、壱面緑を眼にする中でと云うのもいいかもしれない。雪の日と同じように頭が持っていかれる感覚に、そう想った。

 自分が死んでいくことを想像するのは悲壮な行為だろうか。夫が亡くなり悲しかったけれど、痛みも感じているけれど、其れ以上に燦々としきらめくやさしいものを感じている。面会時間が終え病室を出ようとするとき彼が求めてきた握手の力強い感触は、言葉にする以上の無言の言葉は、褪せることなくあたしに残っている。
 そして死する直前までの彼の呼吸を想うと、自身が死んでいくときの其の直前までの生の彼是の願いを描いてしまっている。

 麦畑が金色に染まる頃も素敵よね、と彼に語り掛けると、ああと素っ気無い返事をされたけれど、言葉通りでないことを知っている。新緑に向ける彼のまなざしも。

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