花を買うしか
2024, Nov 18
拾壱月も半ばだというのに、まるで夏のような暑さに日傘をさして歩く。黄葉した葉が光を受け辺りは黄金色壱色の世界。何処に紛れ込んでしまったのだろう、と想う。
彼が別の場所に行ってしまってから、世界との付き合い方がわからなくなってしまっている。
参時に彼の友人から電話があった。月に弐回ほどそう云ったことがあり、無意識のうち暮らしを意識するのか、其のときは頭がはっきりしパスタなどを茹でては食事もきちんととれる。
此の壱年と数箇月で自分の友人は随分いなくなった。実際はいなくなったのでなく、自分の意識から消えてしまったのだ。特に友人に彼の話はしなかったけれど、あたしには欠かせないものであって、彼を内包した自分とつきあってくれた人でないと続かないのだろう。
また眠い時間が増えた。
倒れるように部屋に横になり時間に構わず寝てしまう。時間は計ったことないけれど、拾分だったり廿分だったりとそれほど長い時間でない気がする。
目覚めると、躯はいつもまるくなっている。膝が鼻に近い。躯を起こすとき何も想わない。こんなとき何を想えばいいのだろう。
あたしが失ったものは暮らしだと気付いたとき、花を買うしかなかった。そうして、あれが欲しいと彼に言い買った、木製の鏡台のきれいな脚を撫でた。