例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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白い空間


 朝まだ頭がぼんやりしている時間、眠気で意識が朦朧としている夜、電気ストーブのオレンヂ色の灯りがやさしい。此の電気ストーブを何処で彼はみつけたのだろう。郷愁を誘うような意匠に和む。
 緋色と銀色とで意見が分かれたけれど、あたしの選んだ銀に落ち着いた。いつも彼は譲ってくれた。色に関してあたしが煩いことを知っていたから。

 冬は白が落ち着く。
 書架もオープンラックもわずかなものを残し色数が少なくなった部屋に、銀色が溶け込んでいる。タオル掛けに掛けた白いバスタオル、白いバケツの屑籠、棚に乗った白いアイロン、・・・。耳にしんとした音が拡がっていく。其処に彼が座っているようで、あたしも自分のことをして静かに座っている。
 冬の日の白い空間。雪を待ち望んでいた。其処でまるで解き放たれたかのよう雄弁になり仔犬の如く駈け廻るあたしを、彼だけが知っていた。

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