記憶の中の匂い
2025, Aug 21
茣蓙のカーペットに寝そべると、かすかに匂いを感じた。余り嗅いだことないような不思議な匂い。其れと同時になつかしいような匂い。そう想っているうちに思い出した。
菓子入れにした籠にいつも収まりきらないほど菓子が入っていた。ポテトチップス類は彼が、チョコレイトの箱は自分が足していた。ときどき其処に現れるカレーせんべい。
どっちが買ってきたものでも一緒に半分づつ食べていたけれど、カレーせんべいは別だった。あたしが食べられない辛い味だった。袋を開け皿に移し彼に出すと必ず、辛くないからどうぞ、と言われひとつ食べるものの自分には辛かった。彼は首を傾げていたけれど、少しでも辛いと食べられなかった。
茣蓙はカレーせんべいの匂いがする。
今度みつけたら買ってこようか。賞味期限が切れても装飾品のひとつにでもし飾っておこうか。それとも記憶の中に留めておこうか。思いがけずできたやさしい時間になかなか起き上がることができなかった。