例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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いい天気


 町役場は多くのことを担っている。譲渡や相続所得等でない限り申告も其処でできると知った。
 順番をとり受付をし指定時間に再度行かなければならないのは是までと一緒だったが、椅子は拾脚ほど並んでいるだけで人も少なく然程待ち時間もなく、受付では親切にも用意するものの確認がありファイルまで渡された。そうして指定時間になり中に通されると、机ひとつにパソコン付きの税理士がおられ、質問しながらパソコン操作等全てしてくれたうえおかあさんと同居しているなら扶養にした方がいいと勧めてくれた。同居していなくても、同居し世帯主が自分でなく健康保険の支払い等が自分名義でなくとも、扶養にできるとは恥ずかしながら知らなかった。
 御蔭で去年同様税金の支払いが零になった。他の税理士さんでも同じだったのだろうか。わからないが、感謝しかない。
 もうずっと横柄な人に会っていない。今日もいい天気。

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アップルティーと手編みのカーディガン


 ひと月が経ちやっと完成したセーターを躯に当ててみる。
 丈は短めだが、襟の開きと袖丈はいい具合にできた。ただ模様の方はほどく前のものと同じように編めず、随分細かいものになってしまった。編み直した方が本来の模様なので以前より上手に編めるようになったとも言えるが、複雑な気持ちを抱える。

 今日も朝から風が強い。テレビをつけると、積もった雪の上に雪が降りしきる画が映る。日当たりのよい弐階に上がっても寒くて肩掛けが手放せない。
 ふと想い壱階に戻り、手編みのセーターを脱ぎ既製品のセーターに着替え、既製品の上着を止して手編みのカーディガンを羽織る。真冬はこうするのが良かったのだと此の冬の寒さに思い出す。

 亀たちの様子を覗いた後、林檎の匂いのする紅茶を淹れた。壱杯は自分に。壱杯は彼に。紅茶には牛乳と黒砂糖を加え、其処にチョコレイトを添え、あまいお茶の時間にする。
 あたしはうんと足りない人間のくせ余計なものばかり身につけてしまっていると想うけれど、何も無駄にせずに過ごしている気がする。

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曖昧な境界


■場面、壱。
 目覚めると彼がいて午后弐時だと言われた。怒るでもなく皿に持った細かく切った浅葱を見せ、これでいいのかと訊く。そして、パスタが食べたいので麺を茹でてと言う。
 あたしは慌てて布団をあげ着替えた。

■場面、弐。
 パスタは食べ終えたのだろうか。彼がテレビやブルーレイを置いた棚の前に座り何かしている。
 背後から彼に声を掛け、レコードプレーヤーが使えるようになる機器はどれがいいか教えてとあたしはお願いしていた。

■場面、参。
 机と椅子が並ぶ待合室のような教室のような空間にあたしはいた。机の上には彼が残してくれた箱が置かれ、開けるとディスクが数枚入っていた。
 其の壱枚に母の名が記されていたが、音が入っているものなのか映像が入っているものなのか判らず、どの機器に入れればいいのかもわからない。周囲にいた人に尋ねると機器のところまで連れて行ってくれた。(既に母に宛てたものだと云う意識は失せている。)
 中に入っていたのは映像だった。歌も入っていてひとりで見ていると、背後から女性の結構大きな声が耳に入った。そんなもの何の足しにもならない、と彼女が言うので、あなたはあなたあたしはあたしだと言い返していた。

□場面、肆。
 夢を見ていたのだと明け方になり知る。
 夢と現実、過去と現在、は其々はっきり分かれているのに境界は曖昧で行ったり来たりしている。

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コンクリートリバー


 気が付くとバス乗り場のベンチに座っていた。隣には彼がいてあたしの膝を枕にし眠っている。両隣にはふたりづつ人が座っていたが気にする様子はない。
 バスに乗降したことは憶えていない。見覚えのあるようなないような町がふいに眼の前に現れた。町の中には川が流れていた。
 彼について川沿いを歩き橋を渡り石でできた建物の中に入った。途中まで屋根はなく奥に扉がある。扉のこちら側には数人が立っていた。男の人ばかりだった。左を向くと受付の窓口があり其処は理容店だとわかった。
 彼を待つ間あたしは川を眺めていた。川の周りはコンクリートで固められ、流れこそあるが水は黒く汚れていた。異臭も感じられる。
 扉の奥から出てきた彼はひとりではなかった。知り合いのようだが、見たことのない男だった。これから何処かへ行くと言う。辺りは薄暗くなっていたのであたしは先に帰ると言い彼と別れ橋を渡り来た道を戻った。
 そうして川を挟み彼と同じ方向へ歩く。薄闇に少し不安な気持ちになる。

 川が出てくる夢を時々見る。
 夢の中であたしは川を行ったり来たりしている。川の傍に鬼がいたこともあるが、行き来していても自分だけ注意されたことはない。陸文銭を渡したことも壱度もないが、川は此岸と彼岸の間を流れている川だろうかとも想ったりする。

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C’est la vie


 小さな亀と一緒に大きな亀を陽の当たる玄関前に出す。目が開きひと先ず安堵する。

 注文した棚が昨日届き、また段ボール箱を開け整理を始めなければと想っていると、いつも通りいとこがやってきた。
 買い物のついでに毎週欠かさず母の様子を見に来てくれるのだが、今日は悲しい知らせも持ってきた。叔父(叔母のつれあい)が亡くなったと知る。

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