例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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心象


 珈琲を飲むのも菓子を食べるのも、昨日に続き休み。
 鉛筆を持つのも雑記帳を開くのも、いつもの半分の時間。
 充てるのは睡眠。
 昨晩同様今晩も拾弐時間睡眠をとろうと想う。

 溜まった塵を棄てるように自分を削ぎ落す想像。
 いつの間にかリトルミイができるようになっていた髪。
 明日元気になったらちょっと部屋の模様替えをしてみよう。
 きれいな赤い布が眼をおおう。

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天国の日々


 横になっていた躯を起こし胃に少し食べ物を入れ、壱日限りと記された葉書きを手に出掛ける。上着の要らない日。素直に帰ってこようと想っていたのに、回り道をしたくなる。
 土手の道を歩くのに、なんていい日なんだろう。誰も歩いていないなんてもったいない。土手下には車が数台停まっているが、魚釣りにでも来たのだろうか。
 お弁当がどうのと、また彼とカエルは話している。其の横であたしは菜の花摘みにいそしんでいる。

 補充したエネルギーを使い果たし、菜の花を活け終わると立っていられなくなってしまった。仕様がないなあ。耳元で彼とカエルの声がする。
 いいの、天国の日々みたいな時間がだいじ。そう言って躯が冷えるまで床に横になっていた。

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電池切れ


 夕食後暫くすると腹痛を起こす。トイレでうずくまっているうち気分が悪くなり、寝間着がびっしょり濡れてきた。
 トイレを出て隣の母の部屋の床に横になる。寒さに襲われ炬燵布団を引っ張りくるまる。苦しいと想っていると吐き気をもよおし、トイレで吐くと幾らかすっきりした。
 トイレを出てまた床に横になっていると落ち着いてきたので、自室に戻り上だけ着替え布団に横になる。
 それで済んだ。
 ノロウイルスでもインフルエンザでも胃腸炎でもなさそうで安堵する。

 天気や起床時間、食べたもの、壱日のできごとをざっと記した覚え書き帳を開くと、この壱週間空白になっていた。昼間眠気に襲われ横になったとき、想っていたより弱っていた自分に気付けばよかったのだろう。
 体力や気力が10あったなら10全部使ってしまう自分。過集中こそだいぶ直ったけれど、途中で止める感覚が摑めずにいる。

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彼女


 洗って衣文掛けにかけた袢纏を、午后の陽射しが透かす。綿が余り入っていないことや縫い目の粗さがよくわかる。それが自分にもできそうかと想わせる。
 直すのに羽織の生地を当てるのもいいだろうか、胸に紐をつけ茶羽織りにしてもいいだろうか、などとぼんやり想い浮かべる。

 幾度も想い描く。手を付けても想い直してはまた想い描く。時間は無限ではないのに、あたしはそうして時間を使い過ぎるほど使う。そして完成させてからもまだまだ想い描く。
 ひとりで過ごしていても飽きない理由はそこにあるのだろうか。けれど、ひとりと言っても自身がいるではないか。何処までも付いてくるし、度々彼女は話し掛けてもくる。
 然もあたしより倍はしっかりしているしおおらかでもある。そのうちいいのができるよ、とくったくない顔で彼女は笑う。

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祝いの日


 訪ね人、今日もあり。お礼と言われ恐縮しつつも受け取る。
 箱を開けると出てきたのは父の好きそうな和菓子。小皿に全参種のせ、今日は母の誕生日なので豪勢です、と供える。

 或のおいしい寿司屋に連れていく予定だったけれど、今日を祝えたことを慶ぼう。
 黄色が好きと言った母。水仙も菜の花もいい匂い。
 彼女がもう此処で暮らすことはないとわかっても部屋は其のままに。

 性格が合わず煩わしくもあったけれど、短くも一緒に暮らした日々が彼女にとり穏やかで愉しいものになってよかったと想う。
 あれから訪ね人におかしな者もいなくなった。

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