曖昧な境界
2025, Feb 19
■場面、壱。
目覚めると彼がいて午后弐時だと言われた。怒るでもなく皿に持った細かく切った浅葱を見せ、これでいいのかと訊く。そして、パスタが食べたいので麺を茹でてと言う。
あたしは慌てて布団をあげ着替えた。
■場面、弐。
パスタは食べ終えたのだろうか。彼がテレビやブルーレイを置いた棚の前に座り何かしている。
背後から彼に声を掛け、レコードプレーヤーが使えるようになる機器はどれがいいか教えてとあたしはお願いしていた。
■場面、参。
机と椅子が並ぶ待合室のような教室のような空間にあたしはいた。机の上には彼が残してくれた箱が置かれ、開けるとディスクが数枚入っていた。
其の壱枚に母の名が記されていたが、音が入っているものなのか映像が入っているものなのか判らず、どの機器に入れればいいのかもわからない。周囲にいた人に尋ねると機器のところまで連れて行ってくれた。(既に母に宛てたものだと云う意識は失せている。)
中に入っていたのは映像だった。歌も入っていてひとりで見ていると、背後から女性の結構大きな声が耳に入った。そんなもの何の足しにもならない、と彼女が言うので、あなたはあなたあたしはあたしだと言い返していた。
□場面、肆。
夢を見ていたのだと明け方になり知る。
夢と現実、過去と現在、は其々はっきり分かれているのに境界は曖昧で行ったり来たりしている。