例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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黒と静寂


 白い衣類は白い衣類のみで洗濯するのがいいように、黒い衣類も黒のみで洗濯した方が色持ちがいいような気がする。
 白っぽいものと黒っぽいものに分け籠に入れた洗濯物の半分を洗濯し、竿に掛ける。並んだ黒い衣類。漆黒、墨、濡羽色、消炭色、鉄紺、と微妙に異なる色に、夜の空気や森のうす暗さや日影、クワガタムシの背などが重なる。

 昼が近付き降りが強くなった雨に、弐階の南側の窓と壱階のかあさんの部屋の窓は閉めた。他は閉めない。吹き込まないと知ったから。

 開いた窓の向こう、ばしゃばしゃと大きな音を立てている雨。耳が外と繋がっている。意識して息を吸えば、ドクダミの匂いも感じる。いつか嗅いだ匂い。いつのまにか隣にいた彼に、チョコボールを埋めた処を憶えている?、と訊ね、彼が助けて壱年以上家にいたクワガタムシに想いを馳せる。

 止まってしまったような時間。墨色の大きな麻の布が欲しくなる。雨の日だけ垂らすカーテンにしたい。
 黒があたしに運んでくるのは静寂。其れも息が詰まるほど透明な。

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