板の間
2025, Jun 27
玄関の隅に追いやられてしまったスリッパ。上がり口に置いたタオルを縫った足拭き。
板の間も足裏も熱が籠るようになり、裸足で歩き廻っていると白い跡が付くようになった。此のところ毎日稼働するフローリングワイパー、掃除機、雑巾、箒に塵取り。けれど、どんなにしても床に跡や埃がなくなることはない。
壱ミリの引っ掻き傷も気になる性格。終わりがないとわかっていても腕は自然に伸びている。考えていないときの動作はいいななどと想いつつ、どうしてこうなったのか模索するけれど、途中でやめてしまう。
未明の空気が残っているのだろうか、家の周りに水を撒いたからなのだろうか。ときどき踝を撫でていく冷たい空気にふれようとするけれど、指先でも届かない。
玄関扉の硝子を抜けやってくる陽射しは弱く、玄関だけが明るい。手前の板の間が白く光る様子を眺めながら、今日も暑くなるとひとりごちて水を飲む。
其れは子供の頃に存在していた夏。唯一の板の間は縁側で、壱年中外にサンダルを置きっ放しにしていた。そして端に置かれたあたしの机。
掃除した板の間に伏せ、暑さに負けて庭遊びから戻ってくる猫を今もあたしは待っている。