黒い服
2025, Apr 08
昨夜またふいに眠れなくなった。
朝になり布団から抜け出すときは重い気分だったのに、黒いシャツと黒いパンツに着替えると落ち着いた。
外は風があり、櫻の花びらが舞っていた。・・・短かったな、なんてつぶやいたあとで、此処では染井吉野しか咲いていないことに気付く。
此処に来るまでは、緋寒桜から始まり、山櫻に染井吉野に枝垂れ櫻と来て、八重櫻にウコン櫻で終わっていく春の初めだった。そして、其処に彼がいて、あたしがいた。
病院で出されたアンケートの相談相手の箇所には、いないに丸をつけておいた。いないわけでなく、相談すればみな応えてくれるだろうけれど、相談相手が欲しいわけではなく、彼のようにわからないところを的確に教えてくれる人がいたらいいな、と想ってしまったのだ。
励ましも慰めも要らない。迷いや悩みならひとりで答をみつける。わからない問題に淡々として力を添えてくれる人を自分は欲していたことを知る。
明日も黒い服に身を包もうと想う。静謐なものを傍に置いておきたく。