例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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雨天決行


 バシャバシャと大きな音をたて降る雨。
 いっとう歩きやすい鹿さん(と呼んでいる)の黒い布靴とリュックサックで家を出る。病院まで徒歩廿分。近くもないが遠くもない距離。傘は夫の使っていた折り畳み傘にする。重ねてたたんだビニイル袋も持っていく。
 集中治療室のベッドに横たわる母に看護師さんが呼びかけると、今日は薄目を開けた。拾分も持たずまた目を閉じ眠ってしまったけれど、あたしが来たことがわかっただけでも昨日からするとかなりな進歩だ。

 帰宅し払渡請求書の作成に取り掛かるが、何せまる肆年分だけありなかなか進まない。休憩に珈琲を淹れ、母に貰った孔雀の塗り絵で遊ぶ。
 羽を赤や黄で塗った母の孔雀は虹色の鳥になり、見ていると愉しさに笑ってしまう。大人で母のような塗り方をする人は珍しいかと想う。
 あたしが色をつけていく孔雀の羽は青や緑や黄で、母の孔雀のような愉しさはないだろう。けれどあたしにしては随分華やかさがあるものになりつつあり、こんな色使いもできるではないかと自身で自身の頬を指先で軽く叩く。

 どれもこれも今日中には終わらない問題。
 雨音が心地いいので、気にせず進んでいく。

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