待ち人来ずたよりあり
2025, Apr 03
目こそ閉じたままで深い眠りに落ちているのか反応はないものの、時々口をもごもごとさせている母に昨日より落ち着いたものを感じる。壱時低くなっていた血圧が元に戻ったようで、顔には赤みが差している。衣服も下着からパジャマに変わっていた。昨日は肩を叩いたら反応もあったそうで、尿も出るようになったと看護師さんが教えてくれた。
時折ピーと鳴る機器から出る音は、呼吸の回数が多くなったときだと云う。疲れちゃったよねえ、と母の肩の辺りを撫で、元気になろうね、と声を掛ける。
病院から帰り母の部屋の卓に乗ったものを整理していると、母が塗ったものでない塗り絵が壱枚みつかった。確か貸してくれたと話していた塗り絵だった。よく見ると端に名が記されている。
労わりあうことを覚えた者はやさしい。弱くなった自分のことだけで手いっぱいだろうに、同じような他者を気に掛ける。母には待っていてくれる人たちがいる。