酔ってしまいそうな色に
2024, May 30
あちこちで山吹の花が開いた。或の鮮やかなきいろを素敵だと言い笑っていた彼。きいろは好きでなかったから、山吹の花を眼にする都度、酔いそうな色だと言いあたしは早足で通り過ぎた。 ツツジの赤紫色と言い彼は鮮やかな色を好んだ。
赤紫色の薄手のナイロン製のパーカーを素敵な色だと言い彼が買い求めたとき、あたしは笑うしかなかったけれど、何処へ行っても遠くから彼をみつけられた。
真赭色のガーゼのストールをあたしが買ったとき、痒くならないと言うと、彼も赭色のものを買い捲いていた。
彼が数回しか使わなかった薔薇色のバスタオルを、今はあたしが使っている。酔ってしまいそう。髪を包み笑う。
眼にする都度酔ってしまいそうになる色は、そのまま彼になった。