ハーブティーを淹れた朝
2024, May 31
いつか口にしたことのある色と味だと想い記憶を辿る。
越してくる以前、参日に壱度こしらえていた大麦、ハト麦、どくだみ、と数種を混ぜたお茶の味を思い出す。彼の持っていく水筒に毎日入れていた。いつの間にか店頭から消えた袋に変わり、ティーパックの麦茶を淹れるようになり、以来口にすることはなかった味だった。あたしが匂いも味も苦手で濃さを確かめる為時々口に含むくらいだったお茶を、彼は好んで飲んでいた。
珈琲の代わりに今朝は其のハーブティーを彼に出す。懐かしい味だね、と言うと、うんと云う返事があったように想えた。一緒に過ごすと云うことは、そう云うことなのだろう。事実とは異なる話に困って彼の友人に話をしたとき其の人は、彼はそう云うことは言わないな、とはっきり否定してくれたけれど、それも同じだろう。
預けた覚えも任せた覚えもないのに、互いに言動が読み取れる関係。不可解と云う言葉が無い。同時に相手の奥の奥まで踏み込み荒らす気持ちはなく、何かの拍子に開きかかってしまった扉を閉める。
誰も誰の心の奥はわからない。だからそっとしてだいじにしたい。